ペンネーム:ごぼう
プロフィール:リハビリテーション病院へ入職し、作業療法士歴10年ちょっとです。現在も現役で働いています。
私はリハビリテーションに特化した回復期病棟で働いています。
回復期病棟は、脳血管疾患や運動器疾患、呼吸・循環器疾患など様々な患者さんが病気と闘っている場所です。
私たちリハビリテーションのスタッフは、患者が可能な限り自分の身体能力を発揮し身の回りのことが再びできるように、日々お手伝いをしています。
今回は、癖が強い男性患者さんの話をさせていただきます。
非常に頑固な性格なので名前はガンコさんとします。
ガンコさんは元気
ガンコさんは高齢な方で、脊椎圧迫骨折という病気で入院されました。
特にキッカケもなく、急に背中が痛くなったとのことで受診されたとのことでした。
この脊椎圧迫骨折という病気は、人によっては痛みが強くベッドから動けず寝返りすら苦しいということも珍しくないものです。
しかしガンコさんは入院の時点で、痛みはあるのですが歩けるくらいの状態です。
また、高齢ではあるのですが受け答えもしっかりしており、認知的な部分も問題ありませんでした。
これなら、早い時期に退院してご自宅でまた元気に生活が送れるだろうなと考えていました。
ですが蓋を開けてみると、1週間経っても、トイレも風呂も自分で行かずにベッドで全て看護スタッフに任せている状況です。
自室でオムツをしており、排せつするとナースコールでスタッフを呼び出し都度、対応してもらいます。
お風呂に関しても、機械浴といいストレッチャーで寝ているだけでスタッフが全身を洗ってくれます。
しかし、食事のときだけは食堂へしっかりとした足取りで歩みだします。
痛みに関してはほとんど訴えもないので、病院内での生活はほとんど自分で可能だと思われました。
そのため、幾度と自分でできることは自分で行うように説明するのですが、「ここは病院だろ。お前に患者の気持ちは分からないだろうな」と取り合ってくれません。
リハビリテーションに関しても、「なんで、俺がこんなことをしなければならないんだ」と耳を傾けてくれずに拒否します。
何度かガンコさんの部屋へ足を運び、雑談から始めリハビリを促すと「脚くらいはマッサージしてみる」との返事がありました。
しかし、しばらくの間はリハビリテーション室どころか食事以外はベッドから動かないという日々でした。
ガンコさんの性格としては怒りっぽい、卑屈、頑固というものがあり、無理やりリハビリテーションを行うと言動が助長されてしまうので注意が必要です。
ガンコさんハラスメント
病院生活にも慣れたのか、スタッフと話をしているのをみているとセクハラまがいの発言も多くなり、特に女性に対しては言葉づかいも乱暴なものであることが分かってきました。
たとえば、女性看護師が注射針を腕に刺すときに痛みが強かったり、針を刺すのが難しいため刺す腕を変えたりとすると、「下手くそ、もういいよ。女のくせに」
といった発言をされ、医療や介護に対しても非協力的になってしまうのです。
他にも、TVの位置のズレや布団カバーに少しでもシワがあると説教し始めるという具合でした。
女性スタッフからも対応に困っているとの声が聞かれ、注意や指導を行うのですが、あまり改善されません。
こういう性格ですから、家族仲もあまり良くないようで、ガンコさんのご家族も「できるだけ入院していてほしい」と帰ってくるのを出来るだけ引き伸ばしたい考えのようでした。
ガンコさんの奥さんに聞くと、「すべての家事を任されており、何一つ手伝ってくれていない。それどころか、自分のことすら満足にしてくれないことも多い。」と日々の生活に疲弊している様子で、少しガンコさんと距離を置きたいという気持ちも分かります。
ガンコさん家に帰る
入院してからしばらくして、ガンコさんの口から「病院は飽きた。早く帰らせろ」と発言がありました。
退院するためにはリハビリ室へ行って、自宅へ帰るための能力が備わっているのかを確認しなければならないと説明します。
すると「よし分かった、俺を起こしてみろ」とようやくリハビリテーション室へと移動します。
1ヶ月近くベッドで寝ていたため、自分でできていたはずのトイレや更衣、入浴、階段昇降が介助がなければ行えなくなっていました。
結局、半年近く入院することとなりましたが、病院内では全て自分で行えるようになり無事退院され、現在はご自宅で生活をしています。
卑屈さや頑固な性格は、ときにして自分自身の身体の回復を妨げ、家族の仲まで悪くしてしまうものになりえます。
脳みそもトレーニング必要
生きていく上で年を重ねていくことは当たり前のことです。
高齢となると大脳が小さくなるため、コントロールが効かずに怒りっぽくなる、話を聞かない、頑固になるようです。
相手に合わせて柔軟に物事を理解することができない、社会性も低くなり周りのことは気にせず困ることをしてしまうことは多いです。
しかし年をとっても脳を鍛えることで、予防が可能です。
自分の身体を大切にし、周囲にも迷惑がかからないように、生活習慣の適正化と運動はしっかりと行っていきたいですね。
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※本記事は個人の体験談をもとに作成されております。
※健康法や医療・介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず公的機関による最新の情報をご確認ください。
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