【40代・50代】更年期障害にお悩みの方へ。国際薬膳師がおすすめする食材とレシピ

前回の記事「更年期の心と身体を整える!鍼灸師がおすすめするツボ5選」では、中医学の観点から「更年期」にみられる5つの体質に着目し、その改善にぴったりの「ツボ」や養生のコツをお伝えしました。

更年期におすすめするツボ5選

 

「更年期」は、女性なら誰にでも訪れる心と身体の転換期。

この時期を上手に乗り越えることが、素敵に年齢を重ねていくためのカギとなります。そのためには、日々の養生が欠かせません。

 

養生とは「病気になることなく、健康に長生きして人生を楽しむための知恵」のこと。そのなかには、毎日の食事も含まれます。

中医学の概念のひとつに「薬食同源(やくしょくどうげん)」があります。

自然の恵みである「食材」には「薬」と同じような効能があり、健康を保つためにはどちらも同じくらい大切であるというものです。

 

中医学では「更年期」の心と身体の不調は「体質」によるものと考えます。

一つひとつの「食材」の意味を知り、身体の状態に合わせて摂り入れることで、偏った体質も少しずつ改善することができます。

 

今回は「更年期」シリーズ第2弾として「国際薬膳師」の立場から、心と身体の不調を改善する「食材」と「薬膳(やくぜん)レシピ」をご紹介します。

更年期障害の改善へ「薬膳」を生活へ取り入れましょう

「薬膳」とは?

健康に対する意識が高まり、食への関心が寄せられるなか、テレビや雑誌などで「薬膳」の特集が組まれる機会も増えてきました。

 

「薬膳鍋」「薬膳酒」「薬膳スイーツ」などなんとなく身体によさそうなイメージがある一方で「なんだか難しそう…」「手間やお金がかかりそう…」「漢方薬の味がしそう…」など、ネガティブな印象を受ける方もいらっしゃるかもしれません。

 

「薬膳」とは、一体どのようなものなのでしょうか?

わたしたちの毎日の食事にも「薬膳」の知恵が生きています。

 

たとえば、お刺身に添えられた「大葉」。

お刺身などの生ものは「身体を冷やす作用」があるため、胃腸に負担をかけてしまいますが、辛味があって「身体を温める作用」がある「大葉」を一緒に摂ることによって、胃腸を冷えから守ることができます。

 

「薬膳」の基本となっているのは「中医学」の理論です。中医学では、身体のバランスが崩れることによって、さまざまな不調があらわれると考えます。

一つひとつの「食材」の特性や効能を考慮し、それぞれの体質やその日の体調に合わせて摂り入れることで、身体のバランスを整えるのが「薬膳」です。

 

「薬膳」には、特別な「食材」は必要ありません。

スーパーなどで購入できる身近な「食材」を使い、それを組み合わせるだけで、簡単に美味しい「薬膳」をつくることができます。

 

「薬膳」で体質を改善しよう!

前回の記事では「更年期症状」と特に関わりが深い「腎・肝・脾」と「気・血」の観点から、体質を5つにわけてご紹介しました。

記事をチェックしていない方はぜひ、ご自身のタイプを確認してみてください。

タイプチェックはこちらから

 

「薬膳」は、一人ひとりの体質や体調を考慮して「食材」を組み合わせる「オーダーメイド料理」です。

自分の体質がわかると、身体の状態に合った「食材」を選ぶことができます。

 

ここでは、「更年期症状」にお悩みの40代・50代女性のために、5つの体質それぞれについて「心と身体の不調」を改善する「食材」と「薬膳レシピ」をご紹介します。

 

身体によいとわかってはいても「薬膳をつくる自信がない…」「毎日続けられるか不安…」と感じる方もいらっしゃると思います。

 

まずは、おすすめの「食材」のなかから1つを選んで、いつもの食事にプラスすることからはじめてみましょう。

「お味噌汁に大根を入れてみよう!」「冷ややっこに大葉をのせてみよう!」それだけでも十分「薬膳」です。

 

更年期障害のタイプ別オススメ「食材」と「薬膳レシピ」

身体のあちこちに老化のサイン【腎気虚(じんききょ)タイプ】

「腎」のはたらきが低下することで「腎精」が不足し、身体のあちこちに老化の症状があらわれます。

腎気虚タイプ」にとって大切なのは、「気」を補って「腎」のはたらきを高めることです。

 

おすすめの食材

「腎」のはたらきを高める黒色の食材「黒ごま、黒豆、黒米、黒木耳、ひじき、ワカメ」など

「気」を補い「腎」に作用する食材「長いも、キャベツ、ブロッコリー、栗、うなぎ、カツオ」など

 

ちょこっと薬膳ポイント

煎った「黒豆」をお茶にしたり「黒ごま」をご飯にかけたりして、黒い食材を積極的に摂ってみましょう!

かんたん薬膳レシピ

 長いもと黒豆のご飯 

材料

・米…2カップ
・黒豆…50g
・長いも…100g
・酒…大さじ1
・塩…小さじ1/2

 

作り方

①米はといで、分量の水に浸しておく
②黒豆は中火で皮が破けるまで乾煎りする
③長いもは皮をむいて1.5cmの角切りにする
④①に黒豆と長いも、酒、塩を加えて炊く

「黒豆」の香ばしさと「長いも」のシャキシャキした食感がクセになる炊き込みご飯です。市販の「煎り黒豆」を使っても、美味しくつくることができます。

 

ストレスでイライラ怒りっぽい【肝気鬱結(かんきうっけつ)タイプ】

「肝」のはたらきが低下することで「気」の巡りが悪くなり、「イライラ」や「気分の落ち込み」など、精神的な症状があらわれます。「肝気鬱結タイプ」にとって大切なのは、「気」の巡りをよくしてストレスを解消することです。

 

おすすめの食材

「気」の巡りをよくする食材「たまねぎ、グリンピース、みかん、ゆず、長ねぎ、生姜、大葉」など

「気」を降ろし「消化」を助ける食材「大根、かぶ、オクラ」など

 

ちょこっと薬膳ポイント

「大葉」や「生姜」など、香りのある「食材」をいつもの食事にプラスしてみましょう!「みかん」や「オレンジ」など、柑橘系のくだものをデザートに食べるだけでもOKです。

かんたん薬膳レシピ

 グリンピースと大根の煮物

材料

・グリンピース…100g
・大根…300g
・長ねぎ…40g
・生姜…10g
・ゆずの皮…1/4個分
・塩…小さじ1
・サラダ油…小さじ1

 

作り方

①長ねぎと生姜はみじん切りにする
②大根はさいの目に切る
③ゆずの皮は千切りにする
④鍋にサラダ油を熱し、長ねぎと生姜、大根を炒める
⑤グリンピースと少量の水を加え、やわらかくなるまで煮込む
⑥塩で味を調え、ゆずを加えてさっと煮る

塩だけのシンプルな味付けですが、香りのある「食材」のおかげで、とても美味しく感じられます。「気」を降ろす作用が強い「大根」を使っているため「お腹の張り」や「便秘」の症状があるときにもおすすめです。

 

潤い不足でほてりやすい【肝腎陰虚(かんじんいんきょ)タイプ】

「肝」と「腎」のはたらきが低下することで「血」と「水」が不足します。身体を冷やすことができなくなるため「のぼせ」や「ほてり」など、熱の症状があらわれます。「肝腎陰虚タイプ」にとって大切なのは、身体の「潤い」を補って「熱」を冷ますことです。

 

おすすめの食材

身体の「潤い」を補い「肝・腎」に作用する食材「小松菜、白木耳、黒ごま、卵、豚肉、ホタテ貝」など

身体の「熱」を冷ます食材「セロリ、白菜、苦瓜、ズッキーニ、トマト、豆腐」など

 

ちょこっと薬膳ポイント

野菜や果物など水分の多い「食材」を、蒸したり、スープにしたりすることで「潤い」を補給しましょう!

 

かんたん薬膳レシピ

 ホタテ貝柱と豚肉のトマトスープ

材料

・ホタテ貝柱(乾燥)…2個
・豚肉(薄切り)…50g
・トマトの水煮(カット)…100g
・セロリ…50g
・パセリ(乾燥)…少々
・水…400ml
・味噌…20g
・酒…小さじ1
・塩…少々

 

作り方

①ホタテ貝柱(乾燥)は水(400ml)に浸して戻し、ほぐしておく
②豚肉は一口大に切り、酒と塩で下味をつける
③セロリはスジを取り除き、1cmの角切りにする
④鍋に①を入れて火にかけ、煮立ったら豚肉を加える
⑤トマトの水煮とセロリを加え、弱火で10分くらい煮る
⑥味噌を溶き入れ、ひと煮立ちさせる
⑦器に盛り付け、パセリを散らす

「ホタテ貝柱」のうま味がぎゅっと詰まったスープです。「トマト」と「セロリ」は、熱を冷ます「食材」ですが、温かいスープにすることで身体を冷やし過ぎることなく「潤い」を補給することができます。

 

疲れやすくて元気がない【脾気虚(ひききょ)タイプ】

「脾」のはたらきが低下することで、「気・血・水」をつくり出すことができなくなり、身体に栄養不足の症状があらわれます。「脾気虚タイプ」にとって大切なのは「気」を補って、胃腸のはたらきを整えることです。

 

おすすめの食材

「気」を補い「脾」に作用する食材「米、長いも、じゃがいも、ブロッコリー、鶏肉、牛肉」など

「気」の巡りをよくする食材「たまねぎ、グリンピース、みかん、ゆず、長ねぎ、生姜、大葉」など

 

ちょこっと薬膳ポイント

胃腸にやさしいお粥を主食にしてみましょう!時間がないときは、レトルトのお粥をアレンジしてもOKです。

 

かんたん薬膳レシピ

 鶏肉と生姜のお粥

材料

米…100g
水…600ml
鶏肉(もも)…100g
生姜…20g
塩…少々
こしょう…少々
ごま油…小さじ1

 

作り方

①米はといで、水気を切っておく
②鶏肉は一口大に切る
③生姜は千切りにする
④鍋に①と水(600ml)、鶏肉を入れ、お粥を炊く
⑤できあがる前に生姜を加え、塩とこしょうで味を調える
⑥器に盛り付け、ごま油をかける

「参鶏湯(さむげたん)」風のお粥です。「鶏肉」と「生姜」には、身体を温める作用があるので「カゼ」をひいてしまったときにもピッタリです。

 

冷えがあって痛みがつらい【気滞血瘀(きたいけつお)タイプ】

「気」の巡りが悪くなることで「血」の巡りも悪くなり、身体に冷えや痛みの症状があらわれます。「気滞血瘀タイプ」にとって大切なのは、「気血」の巡りをよくして冷えを改善することです。

 

おすすめの食材

「血」の巡りをよくする食材「なす、れんこん、黒木耳、チンゲン菜、おから、お酢、紅花」など

「気」の巡りをよくする食材「たまねぎ、グリンピース、みかん、ゆず、長ねぎ、生姜、大葉」など

 

ちょこっと薬膳ポイント

「ドレッシング」や「酢の物」など「お酢」を上手に使って、血行をよくしましょう!

 

かんたん薬膳レシピ

 なすとチンゲン菜の温野菜サラダ(たまねぎと紅花のドレッシング)

材料

・チンゲン菜…2株
・なす…2本
・塩…少々

☆:ドレッシングの材料
・たまねぎ…1/2個
・にんにく…5g
・紅花…1g
・米酢…大さじ2
・ごま油…大さじ1
・醤油…大さじ2
・はちみつ…大さじ1
・塩…少々
・黒こしょう…少々

 

作り方

①☆の材料でドレッシングをつくる
(たまねぎとにんにくはみじん切りにし、火が通る程度に炒め、他の材料と合わせる)
②なすは乱切りにする
③チンゲン菜は根の先を少し切り落とし、水でよく洗い、ざく切りにする
④フライパンに、なすとチンゲン菜(根本部分)を入れ、ふたをして中火で蒸し焼きにする
⑤しんなりしてきたら、チンゲン菜(残りの部分)と塩を加え、ふたをして火が通るまで蒸し焼きにする
⑥器に盛り付け、ドレッシングをかける

わたし自身「気滞血瘀タイプ」なので、よくつくる「薬膳」のひとつです。「たまねぎと紅花のドレッシング」は「焼き肉やハンバーグにかけてもウマいね!」と旦那さんからも好評です。「紅花」がスーパーで手に入らないときは、オンラインショップなどを利用してみてください。

 

まとめ:更年期障害に悩む方へ「薬膳」を

今回は、40代・50代女性の「更年期症状」に効果的な「食材」と「薬膳レシピ」についてご紹介しました。

 

わたしの場合「更年期症状」があらわれたのは、47歳を過ぎた頃でした。なんの前触れもなく「動悸」「めまい」が繰り返し起こるようになり「いつまで続くのだろう…」と不安な気持ちになったのを覚えています。幸いにも身近にあった「薬膳」の知恵に救われ、症状はずいぶん落ち着きました。

 

「薬膳」は、それぞれの体質やその日の体調に合わせてつくる「心と身体にやさしい料理」のこと。

身近な「食材」の効能に着目し、組み合わせを少し工夫するだけで、毎日の食事が「薬膳」に変わります。

 

「薬膳」は続けることが大切です。毎日の食事に少し意識を向けることで、わたしたちの心と身体は着実に変化していきます。

 

できることから少しずつ取り入れて「更年期」を穏やかに過ごしましょう!

 

 

今回の寄稿者は「kao」さま

kaoさまのプロフィール:鍼灸師・国際薬膳師。
女性のための鍼灸院で、お客さまの美容や健康のお悩みに向き合っています。
東洋療法美容salon 漢方美人
50歳を過ぎ、更年期真っ只中。中医学のチカラを借りて養生するなかで、穏やかに体調が整っていくのを感じています。「中医学の素晴らしさをたくさんの方に伝えたい!」そんな思いから、ライターをはじめました。愛猫(るる)の「かまって攻撃」をかわしながら、楽しく執筆しています。

 

<了>

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※本記事は個人の体験談をもとに作成されております。
※健康法や医療・介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず公的機関による最新の情報をご確認ください。
※記事に使用している画像はイメージです。

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