- 人生会議って何だろう?
- 何を話したらいいの?
- 何のために話をするの?
初めて聞くと、何やら壮大なテーマ性を感じる、「人生会議」。
言葉を聞いたことがあっても、詳しく知らない人がほとんどでしょう。
「人生会議」とは、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の愛称で、もしもの時に望む医療やケアを前もって考え、共有する取り組みです。
この記事では、人生会議=ACP(アドバンス・ケア・プランニング)について、元気なうちに取り組むメリットや人生会議のすすめ方について解説していきます。
人生会議とは
人生会議とは、もしものときのためにあなたが望む医療やケアについて、前もって考え家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取り組みのことです。
厚生労働省はこれまで、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)として普及・推進してきました。
2018年には、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)をより馴染みやすい言葉として世間に浸透させるため、愛称を一般公募し「人生会議」に変更されました。
終活に取り組むなかで、人生会議に触れたことがあるかもしれません。
人生において「もしも」のときは、いつどのような形で訪れるか誰にも分かりません。
高齢になったときだけでなく、突然の事故などでも、自分の意思が伝えられなくなる場面が想定されます。
だからこそ人生会議はシニア世代だけでなく、本来はどの世代の方にも必要なのです。
しかし実際には、もしものときのためと言われても、なかなか実感がわかないのが本音でしょう。
2018年に厚生労働省が公表した「人生の最終段階における医療に関する意識調査」によると、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)について75.5%の人が「知らない」と回答。
そしてACP(アドバンス・ケア・プランニング)の賛否については64.9%の人が「賛成である」と回答しています。
人生会議の認知度はまだ高くないものの、半数以上の人が必要性を感じていることがわかります。
元気なときに人生会議をおこなう3つのメリット
人生会議をおこなうメリットは3つあります。
- 自分の希望が反映される
- 本人・周囲の満足度が高まる
- 家族・周囲の精神的負担が軽減される
それぞれについて解説していきます。
自分の希望が反映される
もしも自分に医療や介護ケアが必要になった場合、どのような希望があるでしょうか。
- できる限りの医療を受けたい
- 最後まで自分の口から食べたい
- 痛い・辛い延命は望まない
- 住み慣れた自宅で過ごしたい
- 家族と一緒に過ごしたい
医療・介護ケアの内容だけでなく、生活したい場所や誰と一緒に過ごしたいかの内容も含まれます。
人は命の危機が迫った状態で、約70パーセントの人が、自分で医療やケアを決めたり、それを人に伝えたりすることが出来なくなるといわれています。
自分の希望をしっかり意思表示しておくことで、もしものときに希望を反映させてもらえる可能性が高まります。
本人・周囲の満足度が高まる
人生の最期を望む形で迎えられることは、本人の満足度につながります。
「こんなはずではなかった……」と後悔しないためにも、自分の意思を伝えることは非常に重要です。
自分の意思を伝えるためには、医療や介護ケアにどんな選択肢があるかを知ることも重要です。
また本人の望みが実現することは、家族や周囲にとっても納得感や満足度につながります。
家族・周囲の精神的負担が軽減される
もしあなたが闘病の最中に、人生会議をしないまま意思疎通がとれない状況になったとしましょう。
もしくは突然の事故にあい、救急救命センターに運ばれたとしましょう。
本人と意思疎通がとれない状況で、家族や周囲が本人への医療ケアについて判断しなければならないこともあります。
本人の命に関わることを、家族が決断しなければならないこともあり得るのです。
人生会議をしていないことで、家族や周囲は本人の希望がわからずに困惑するでしょう。
やむを得ず決断したことが、場合によっては「果たしてこれで良かったのか」と答えのない問いを長年かかえることもあります。
もし人生会議が家族や医療・ケアチーム間で行われていれば、家族や周囲の精神的負担が軽減される手助けになります。
人生会議のための4つのポイント
人生会議を行う上でポイントが4つあります。
- 自分の価値観を知る
- 選択肢のメリットとデメリットを知る
- 家族や周囲と共有する
- 話したことを文書に残しておく
それぞれを解説していきます。
自分の価値観を知る
自分の人生において大切にしたいこと、幸せを感じる瞬間、耐えられないこと、望んでいないことはなんでしょうか。
人は何かを選択するとき、些細なことでも無意識で自分の価値観に沿っています。
人生会議のような大きなテーマであっても、自分の価値観に沿うことは変わりありません。
例えば人生の最期に望むことはなんでしょうか。
「おだやかな気持ちで過ごしたい」「最後まで家族と会話がしたい」「例え意識がなく話せなくても、1分1秒でもこの世に存在していたい」など、人の価値観はそれぞれです。
望みがわからない場合は、これだけは避けたい「望まないこと」を考えてみましょう。
「痛い・苦しい処置は望まない」「1人でいたくない」「助かる可能性のない場合に、延命はしてほしくない」など、素直に思い浮かべてみましょう。
人生会議の最初の1歩は、自分の価値観を知ることから始まります。
選択肢のメリットとデメリットを知る
老衰や病状の悪化でどんな経過をたどるのか、その際に考えられる医療や介護ケアにはどんなものがあるのか。
医療や介護ケアの選択肢を知り、そのメリット・デメリットを知ることは非常に重要です。
医療のなかには、延命できる代わりに、痛みや苦痛を伴う処置もあります。
最期は穏やかに、できる限りの痛みや苦痛を感じたくないと望む人にその処置は適切かどうか、メリットとデメリットを知ることは重要な判断基準になります。
家族や周囲と共有する
人生会議は1人でするものではありません。
本人の意思を周囲が知っておくことは、本人と意思疎通がとれなくなった場合に、代わりに意思を反映してもらうために重要です。
そのため家族や周囲の人と、医療・ケアチームが関わっているのであればそのメンバーも含めて、何度も繰り返し人生会議を行いましょう。
話したことを文書に残しておく
人生会議を行ったうえで、本人の意思を文書として残しておくことも有効な手段です。
その方法として、リビングウィル(事前指示書)があります。
リビングウィル(事前指示書)とは、健常な人や患者が、将来的に判断能力を失った場合に備えて、自分に行われる医療行為や介護についての希望を生前に意思表示しておくことをさします。
また事前指示書とはリビングウィルに加え、意思表示ができなくなった場合に、治療やケアの内容について自分の代わりに判断してくれる「代理人」を指定しておくことも含め文書にしたものです。
リビングウィル(事前指示書)について
人生会議で気をつけること
人生会議は本人が話をしたいと思ったときに行うもので、周りが無理にすすめるものではありません。
また人の価値観は絶えず変化するため、1度話し合ったからといってそのままにするのではなく、気持ちや状況が変わった時点で何度でも話し合いましょう。
話したいと思ったタイミングで、身の回りの話しやすい人と始めることが大切です。
まとめ
人生会議は改めて自分の価値観に触れ、最後まで自分らしくあるための話し合いです。
本人の希望を周囲と共有したり、リビングウィル(事前指示書)として文書に残したりすることで、家族や周囲にとっても本人の意思を尊重できるメリットがあります。
人生会議が気になった人は、まずは出来ることから踏み出してみましょう。
ペンネーム:いまいあやこ
プロフィール:看護師ライター兼、終活カウンセラー。病院・地域医療を経て、添乗ナースとして国内外を飛び回り、2018年には世界一周も経験。
2022年より、いのちを見つめることを通して、人生を自分らしく彩る楽しさを語り合える\我が人生、悔いなし!/の会を定期開催中。
「30-40代からの終活のススメ」「いっぺん死んでみる®︎ワークショップ」など講座も開催中。
< 了 >
終活おすすめ記事
※本記事は個人の体験談をもとに作成されております。
※健康法や医療・介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず公的機関による最新の情報をご確認ください。
※記事に使用している画像はイメージです。