少子高齢化や熟年離婚などの老後の社会問題に伴い、高齢者のおひとりさまが増加しています。
そんな環境下で自身の生涯をどう終えるかを自分自身で決定し、準備を進める「終活」の重要性がますます高まっています。
しかし、終活への関心が高まる一方で、実際に取り組む人が少ないという現状も存在します。
この記事では、終活とは何か、なぜ終活が重要なのか、その実態と終活に取り組むべき理由、そして終活の一歩を踏み出すための方法について解説していきます。
終活とは?
「終活」と聞いてどんなイメージをもつでしょうか。
「いよいよ人生の終着点が見え始めた頃に始めるもの」「悲しい、寂しい」「まだまだ自分には早い」。
終活に対するイメージはさまざまだと思います。
日本で初めて終活という言葉が登場したのは、2009年に週刊朝日で連載されていた記事だといわれています。
その後、2012年の新語・流行語大賞でトップテンにも選ばれました。
では、そもそも終活とはどういう意味なのでしょうか。
ウィキペディア(Wikipedia)では以下のように定義されています。
人間が自らの死を意識して、人生の最期を迎えるための様々な準備や、そこに向けた人生の総括を意味する言葉
また終活カウンセラー協会の定義では以下のように定義されています。
人生の終焉を考えることを通じて、自分を見つめ、今をより良く自分らしく生きる活動
残念ながら、人生の終焉がいつ訪れるのかは誰にもわかりません。しかし、そのときは必ず訪れます。
だからこそ、単に人生の最期を迎えるための準備だけでなく、人生の終焉を見据え、今をより良く自分らしく生きるための活動と考えると、とりかかるのに早いも遅いもありません。
むしろ、終活がこれからの人生をより大切に過ごすきっかけになるでしょう。
終活とおひとりさま
2020年、NPO法人「ら・し・さ」が20歳以上の男女、約3,000人を対象に実施した「終活意識全国調査」によると、全体の96.4%が、終活という言葉を知っていると回答しています。
この結果からも、世の中の終活の認知度は高いことがわかります。
この十数年で、認知度が高まった背景には、日本の少子高齢化、核家族化、65歳以上の一人暮らしの方の増加などが考えられます。
少子化で子どもの数が減ることは、同時に家を継ぐ人の減少を意味します。
これまで代々受け継いできたお墓をどうするのか、相続のことなど自分の世代で考えなければならないことがあります。
その一方で着実に高齢化はすすみ、人口に対する65歳以上の割合は、年々増えています。
また、内閣府の「令和4年版高齢者社会白書」によると、65歳以上の1人暮らしの方も、男女ともに増加傾向にあります。
2000年には65歳以上の男女それぞれの人口に占める割合は男性8.0%、女性17.9%であったのに対し、2020年には男性15.0%、女性22.1%となっています。
そして今後、さらに増えると予想されています。
かつては兄弟も多く、親を複数の子どもで支えることが可能でした。
しかし、少子化がすすみ核家族化や1人で暮らすシニア世代のおひとりさまが増えたことで、離れて暮らす子どもに負担をかけまいと考える人が増えたことも、終活が広まった要因のひとつと考えられています。
終活はいつはじめるべきか
一般的に終活を意識するきっかけは、いくつかあります。
- 病気になった
- 体力の衰えを感じるようになった
- 親の介護が必要になった
- 家族や身近な方が亡くなった
シニア世代になれば、何かしらの病気が発覚したり、より体力の衰えを感じたりし始めるものです。
また、親の介護や、家族・身近な方が亡くなったことがきっかけになることもあります。
特に、亡くなられた後の手続きなどで苦労した方ほど、終活の必要性を強く感じるようです。
シニア世代からの終活を行う3つの理由
ここからは、シニア世代から終活を始めるメリット3つについて解説していきます。
体力・気力があるうちに身辺整理ができる
身辺整理とは、身の回りを整理することです。
身の回りにあるものが必要か不要かを判断し、処分したり、片付けたりします。「身の回りにあるもの」とは、服や家具、家電といった手に取れるものをはじめ、車や不動産といった大きいもの、またデータや人間関係、財産も含まれます。
必要か不要かを判断し、不要なものを処分していく作業は、思いのほか労力を要し、短期間で終わるとは限りません。
年をかさね、さらに体力が落ちてしまうと、なかなか私物の整理もすすまず億劫に感じてしまうこともあるでしょう。
だからこそ、少しでも早く始めるメリットがあります。
判断能力があるうちに決定できる
終活では自分の保有資産や相続に関すること、医療や介護についての希望など、判断力や決断力を求められることがあります。
適切な判断が困難になる事例として、高齢になって認知症がすすんだケースです。
認知症で適切な判断が困難になり、本人の意思を確認することが難しく、家族が判断に迷うことがあります。そうならないためにも、普段から家族と情報共有しておくことも大切でしょう。
余生を考えるきっかけになる
人生100年時代といわれるなかで、シニア世代の働きかたやライフスタイルにも変化が表れています。
定年退職後の再雇用や、平均寿命が伸びていることから余生も長くなり、楽しみや生きがいをもつ大切さなど、終活ではこれからの人生について考える機会が多くあります。
老後の資金や生活にも目を向けることで、可能な限り早くから準備することも可能です。
これからの人生を、どう過ごしていきたいかを考えるきっかけとしても、終活はおすすめです。
まずはこれから!はじめての終活 おすすめ4選
では、実際に何から始めたら良いでしょうか。
ここでは終活がはじめての方でも、取り組みやすい内容を4つ解説します。
身辺整理をする
前述のように、身辺整理の範囲はとても広く短期間で終わるものではありません。
そのなかでも取り組みやすいものとして、私物の整理があります。
まずは使えないものから処分していきましょう。
家電製品や大型のものは処分に費用がかかることもあり後回しにしがちです。
破損しているものは、修理してこれからも使うかどうかを考え、使わないのであれば処分しましょう。
他にもサイズが合わなくなった洋服や、いつか使うかも……と保管していたもの、家族の成長に伴い不要になったものなども処分の対象です。
捨てることに抵抗がある方は、フリマサイトやリサイクルショップを活用する方法もあります。
物が減ると家と気持ちにも余白が生まれます。
そして処分の大変さを思うと、今後何かを購入する際に、その必要性を吟味できるようになるメリットもあります。
エンディングノートを書く
エンディングノートとは、自分の万が一の場合に備えて家族や友人に向けて、生前や死後のことについて記述したものをいいます。
エンディングという言葉に寂しさを感じる方もいるかもしれませんが、要は「自分自身に関する情報の整理」です。
エンディングノートの書き方に決まった形式はありません。
最近ではさまざまな種類のものが販売されています。
そうしたものを購入したり、ネットで無料ダウンロードしたりすることも可能です。
また、エンディングノートを市役所で無料配布している市町村もあります。
主にエンディングノートに記す項目は下記の通りです。
- 自分の基本情報(氏名、生年月日、住所、本籍地、家族構成など)
- 遺言書の有無
- 財産や資産について
- 加入している保険の有無
- ペットについて
- 家族や友人への感謝
- 葬儀について
- お墓や埋葬について
- 医療や介護の希望
- 親しい人の連絡先
- ローンや定期購入サービスについて
- パソコンやスマホのID・パスワード
エンディングノートを書くことで、使っていないクレジットカードを解約したり、ネットで登録しているサイトから退会したり、身辺整理にも繋がる情報を整理することができます。
またエンディングノートには法的効力はありません。
財産や遺産、相続に関して自由に記入できますが、遺言書のような効力はないため希望通りになるとは限りません。
もし希望があれば、きちんと遺言書を残しておく必要があります。
また、エンディングノートを書いたら保管場所を家族と共有しておきましょう。
ひとつ注意点としては、防犯上の理由からエンディングノートに銀行口座の暗証番号を記入したり、一緒に銀行のキャッシュカードや印鑑を保管したりしないようにしましょう。
エンディングノートは一度書いて終わりではありません。状況や気持ちの変化があればいつでも書き直すことができます。
年に一度、自分の誕生日に見直すのも良いでしょう。
医療や介護についての希望を考える
エンディングノートのなかでも特に医療や介護の希望は大切な項目です。
前述したように、人生の終焉がいつどのような形で訪れるかは誰にも予測ができません。
もしものときのために、意思表示しておくことは非常に大切です。
たびたび医療現場において、ご本人の意向が分からずご家族がその決断に迷われるケースも珍しくありません。
非常に厳しい話ですが、ご家族があなたの命に関わる決断をすべきときがあるかもしれないのです。
どのように治療をすすめてほしいか、介護が必要になった場合はどうしたいか、延命治療を望むのかなど、元気なうちに希望を考えておきましょう。
家族や周りと情報を共有する
もし、あなたがエンディングノートを書いたり、介護や医療の希望を考えたりしていたとしても、それが家族や周りに伝わっていなければ、本末転倒です。
エンディングノートの保管場所や、お墓や葬儀、介護や医療についての希望などは事前に共有しておくことが大切です。
終活のまとめ
シニア世代にとって終活は、最期を見据えた準備のためだけでなく、これまで過ごしてきた人生を振り返り、これからをさらに充実した時間にするためのものでもあります。
ご家族とも相談しながら、終活をすすめることで、お互いの価値観に改めて触れられることがあるかもしれません。
あまり悲観的になりすぎず、今の自分の想いを大切にしながら、今回ご紹介した方法を参考にすすめてみましょう。
ペンネーム:いまいあやこ
プロフィール:看護師ライター兼、終活カウンセラー。病院・地域医療を経て、添乗ナースとして国内外を飛び回り、2018年には世界一周も経験。
2022年より、いのちを見つめることを通して、人生を自分らしく彩る楽しさを語り合える\我が人生、悔いなし!/の会を定期開催中。
「30-40代からの終活のススメ」「いっぺん死んでみる®︎ワークショップ」など講座も開催中。
< 了 >
※本記事は個人の体験談をもとに作成されております。
※健康法や医療・介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず公的機関による最新の情報をご確認ください。
※記事に使用している画像はイメージです。