終活!終末期患者と最後のタバコ。心に寄り添う看護
今回の寄稿者さま

ペンネーム:田舎の看護師

プロフィール:男性看護師、看護師歴6年、26歳。急性期内科、消化器外科を経験し整形外科病棟にて現在勤務しています。

今回お話させて頂くのは、私が受け持っていた50歳代男性(Aさん)は余命が近い中で、どうしてもたばこが吸いたいとの願いを叶えたお話です。

現在世の中には至るところに禁煙の文字があります。施設内は勿論のこと、敷地内禁煙という施設も多い世の中です。

私は病院で看護師をしており、私が勤めている病院も敷地内禁煙であり、入院している患者さんには入院中禁煙の規則があります。

最後の一服

当時Aさんは肝臓癌stage4で余命が近く、状態が悪化したため入院しました。

入院後対症療法にて状態が一時的に回復しなんとか歩けるようになりました。

そんな時Aさんは「おれはもう長くない。1本でいいからたばこを吸わせてくれ」と。

私自身も喫煙者であり、痛い程気持ちがわかりました。私はなんとしてでも希望を叶えようと思い、同期に協力を得て実行しようと思いました。

しかし、病院のセキュリティはそんなに甘くないのです。すべての所に煙探知機は勿論のこと、ドアのロックや防犯カメラが至るところにあり夜は警備員までいました。

そうなると隠れてコソコソできないと思い、白昼堂々Aさんを私服に着替え、外来の患者さんに混じって外に連れ出すことを考え実行し、見事成功しました。

本来であれば、規則違反であり終末期の患者さんを外に連れ出すことは感染リスク上考えられないことです。

しかし、Aさんは「本当に感謝している。このままでは後悔していた」と。

よく医療の現場においてQOL(生活の質)を高めることが大切といいます。

規則を守ることも大切ですが、患者さんのことを思いその人の思いを汲み取ることも大切だと感じました。

 

 Aさんは一時帰宅することができ、退院の時は「今度一緒に一服しよう」と言ってくれました。

結局、次に入院した際は既に危篤状態でそのまま息を引き取ってしまい、一緒に一服することができなかったのですが、今でも忘れられない思い出です。

 

< 了 >

※本記事は個人の体験談をもとに作成されております。
※健康法や医療・介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず公的機関による最新の情報をご確認ください。
※記事に使用している画像はイメージです。

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