シニアのおしごと日和:第4回「60歳過ぎて猫カフェで働き始めました」

シニア層でお仕事している人もしていない人も「他の人はどんな仕事しているのかしら~?」「私にも出来ることないかなぁ」なんて・・・ちょっと気になっていませんか?

そこで、お仕事している人やお仕事を探している人に「お仕事の話を聞いてみよう」という企画です。 

第4回は 「60歳過ぎて猫カフェで働き始めてみた」になります。

それではどうぞ。

 

今回の寄稿者さま

ペンネーム:ひよりん

プロフィール:62歳で会社を退職。今はフリーランス。コラムを書いたり、HPやカタログの製作をしています。ウォーキングとヨガは朝のルーティンに。黒猫シャロンとシニアライフを楽しんでいます。

けいこさんの仕事は猫カフェオーナー

今回は地方都市から少し外れた元別荘地に住む佐藤けいこさん(仮名)をお訪ねしました。

けいこさんは、60歳過ぎてから自分の天職を見つけたと言って、今では猫カフェの店長さんをやっています。

日々忙しく30匹の猫たちの世話に明け暮れ、お休み返上で働く毎日だとか。

とうとうご主人も引っ張り出されて、夫婦二人三脚で切り盛りする猫カフェ奮闘記の一部をご紹介しますね。

元別荘地に住み始めた理由

けいこさんが住む町は30年以上前に別荘地として売り出された場所。

しかし場所が中途半端だったため、別荘地としてはあまり売れずに、今では日常的に住んでいらっしゃる家が多くなったようです。

それでも元別荘地という事もあり、環境的には抜群に良いところです。町はずれの静かな森の中といった感じです。

この別荘地の入り口からずっと森の中の1本道に沿って家が点在するのですが、夜になると、あまりの静けさと暗さに地元の人でないと通れないような気がします。

それくらい人の気配を感じない場所です。

ここに移り住んだ理由をお聞きしてみると

「当時、もう40年近く前になるかしらね。巷ではやっていた「となりのトトロ」というのがあったでしょ?まさにこの地に足を踏み入れた途端、見える景色がトトロの世界そのもののような気がしたわ。もう迷うことなく土地を購入しちゃいました」と。

このお住まいのエリアから中心部の町までは車で30~40分以上はかかります。

55歳までは中心部の町まで毎日仕事に出ていました。

一人息子を軽自動車に載せて、小学校へ送り会社に向かう生活が20年近く続いたそうです。

中心部にはご主人の実家があったので、何かと便利に使わせてもらえたと言う事です。

「小学校から高校まで、息子の学校生活を重視しながら、実家を拠点にして田舎と行ったり来たりするのが、私たちにとってはとても心地よい暮らし方でしたよ」とけいこさんは言う。

それに、ご主人のご両親との関係もいろいろうまくいかず、ずっと一緒にいては良くないと。そういう意味もあり森の中に小さな家を建てたというのがもう一つの理由でした。

彼女たちが山の方へお家を立てたことで、ちょうどよい距離感が保てるようになって良かったようです。

当時のお仕事をお聞きすると

「当時の仕事?色々やりましたよ。マンションの管理人なんていう仕事もやったけど、多くは経理事務だったかしら。スーパーの経理事務を8年位、その前は一般会社の経理・総務系の仕事。だからずっとデスクに向かう仕事ばかりだったような気がします」

猫カフェのきっかけ

息子が大学に入ったころから、完全に森の中の家で暮らすことが多くなりました

たまたま、庭に紛れ込んできた猫が1匹我が家の家族になったあたりから猫が増えて、いつのまにか10匹までになったのです。

どの子もみんな庭に捨てられた子なのです。

私たち一家が猫好きだとわかるのか、庭先に置いていく人もいたり、うちの飼い猫のルークがお散歩のついでに連れてきてしまった子猫やら。

そんなある日、リビングの掃き出しガラス窓越しに子猫がこちらを見てにゃーにゃ―啼いているのです。

まだ生まれて1か月くらいかもしれないな。

すぐに捨てられた迷い猫だとわかりました。

これ以上うちでは飼う事なんてできませんから、目を合わさないように我慢していました。

しかし何時間もそこに座り込んで、人の気配が見えるとおねだりポーズで必死にアプローチしてきます。

 

夜になっても動きません。

 

あまりに可愛そうなので、ご飯を上げたら凄い勢いで食べたのです。

声を上げながら食べたのですよ。

もう見ぬふりなんてできません。

 

夫に相談したら

「いつも行ってるペットショップに相談してみたら?」というので、早速翌日お店に行きました。

そこにいるスタッフの山田さんが丁寧に身体を洗ってくれて蚤の薬までくれました。

「飼えないなら、お店の前において飼い主を探しましょうよ」と山田さんが提案してくれたことが私たち夫婦と山田さんとの出会いでした。

その猫ちゃんは翌日に優しそうなご夫婦にもらわれていったと聞きました。

 

親しくなって色々話をしていくうちに、「お店をオープンするから手伝ってもらえない?」という話をいただいたのです。

最初は気楽な気持ちでOKしたのです。

それがここまで私たちがのめりこんでいくなんてその時は想像もしませんでした。

猫カフェの仕事

新しい猫カフェはその話をもらってから1年後にオープンしたのですが、そこに至るまで、私たち夫婦はまるでオーナーみたいに、いえオーナー以上の気持ちで立ち上げを応援しました。

まずは店内の装飾・インテリアは壁貼りから猫道や猫階段やら、すべて夫の手作業です。

猫愛溢れるプロ顔負けの技術とセンスを十分発揮した店内になりました。

資材は全部、近所のホームセンターから買いました。

私は、アルバイトの子たちの募集から経理まで、何でもやらねばなりません。

特に、猫ちゃん達は生き物ですから、24時間365日手が抜けないのです。

 

朝は5時前に起きて、家の猫たちの世話からはじまり家事を済ませると、すぐにカフェの猫たちのもとへ駆けつけます。

家とカフェまでは車で20分位です。

朝、私が顔を出すと、それぞれがゲージの中から、朝ご飯の催促です。

30匹の猫たちのご飯を上げながら、それぞれのゲージの中のお掃除をします。

窓を開けて空気の入れ替えをして、猫たちにも朝の空気を吸わせます。

「たまちゃん、今日は気持ちがいい朝だね。元気かい?」

それぞれの猫には名前も性格も違います。1匹づつ名前を呼びながら身体の様子を確認するのも忘れてはならない仕事になります。

その作業をしながらお店に出る子を決めて、1階のカフェに連れて行きます。

それを朝・昼・夜と毎日繰り返しながら猫たちと過ごしています。

 

お店の接待は若いバイトさんが頑張ってくれているので、私はもっぱらバックヤードでの猫のお世話と健康管理が中心になります。

絶対に感染症などにり患しない様に、常に清潔な環境と猫ちゃん自体の健康管理がとても大事になります。

 

夕方近くになれば、さすがに疲れます。

でもふと考えるのです。

こんなにやりがいがある仕事があったかなと。

私はずっと働いてきました。

学生時代も親の仕送りはなかったため、バイトしながら授業料を払って卒業したくらいです。

結婚してからも、経済的理由でがむしゃらに働いていました。

町の家や森の家を往復し、仕事をして家事をして子育てしながら・・・いつまでこんなにお金のために働くのかしら・・・なんてしょっちゅう思っていました。

心も体も疲れ切った時期もありました。

それが、今は身体がとても疲れているのに、お仕事で落ち込むことはありません。

楽しいのです。

そういえば・・・仕事が楽しいなんて、今まで思ったことはなかったな・・・

一人息子も最近結婚したので、ほっとしたし、猫といることがこんなに気持ちが癒されるものだということを、最近改めて感じているのです。

70歳近くなってもまだ、猫ちゃん達に必要とされていることも凄く幸せなことだと思っています。

ペットのお世話はシニアの天職なのか?!

佐藤けいこさんの取材を通して思ったことですが、何歳になっても自分の居場所があると言う事が大事なのだと。

それが人に必要とされているならもっと嬉しいことですね。

もう歳だからなんて言わないで、いくつになっても役に立つことを探してみると、思わぬところに出会いがあったりするものなのですね。

けいこさんみたいに、たまたま行ったペットショップで新たに起業をする方と出会い、それをサポートしているうちに自分の天職を見つけたなんて、とっても素敵なことですよね。

猫ちゃんが繋いでくれた新たなシニアのお仕事でした。

 

では 今日はこの辺で

レポート by ひよりん

< 了 >

※本記事は個人の体験談をもとに作成されております。
※健康法や医療・介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず公的機関による最新の情報をご確認ください。
※記事に使用している画像はイメージです。

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