【精神科】アルコール依存性はイケメンをも蝕む【看護師】

 

今回の寄稿者さま

ペンネーム:なす
プロフィール:看護師歴30年ちょっと。
12年前に精神科病院へ転職し現在も現役で働いています。

 

精神科病院での虐待事件が、度々ニュースになり悲しい次第です。

あってはならない事件であり、同職者としても信じられない、残念な気持ちでいっぱいです。

 私が働いている精神科病院の閉鎖病棟には、主に統合失調症や双極性感情障害、依存性治療もしているため、
アルコールや薬物の離脱期、若年性認知症などの患者さんが入院しています。

 

依存性の患者さんは、離脱期が過ぎると開放病棟に移り、依存性治療プログラムを受ける事になります。

今回はアルコール依存性のイケメンの話。

それでは私の体験談となります。
どこから見てもイケメンなので名前はイケメン。イケメンはお兄様に連れられてやって来ました。

 

入院の時点で酩酊状態です。
一般的にこの状態であれば、酒臭いのがセオリーですが、そこはイケメン普通の人とは違います。

 なんと失禁していました…

果たして何日分?ってくらいの大失禁ですからね…
外来が異臭に包まれたわけですが、文句を言う女性はいおられませんでした。
あまりの臭いに入棟するなり風呂場へ直行、綺麗になってから病室へ案内。

お部屋で点滴をしますが、自分で針を抜いてしまうため、医療処置も困難な状態が続きました。

幸い食指はあり、嚥下も問題が無かったため、経口摂取に切り替え対応しましたが、
離脱症状の手の震えは、泡立て器持たせたら3分経たずにメレンゲに角が立つくらい激しく、
自分でご飯を食べられるわけがありませんでした。

身長は175センチくらいありましたが、足が立たず歩く事ができませんでした。
日中は車椅子を使い、夜はオムツを着けてベッドに寝て過ごしてもらいました。

 

 そして1番の問題は夜間せん妄です。

夕暮れ時になると、ベッドから床に這い出て来ては、室内の床を這い回り、
何故か外人になり、英語風言語で延々と独り言を言い、何もない空間にアクションを起こす。

えっ?と一瞬瞬ぎはしますが、そこは楽しげなので安全である場合は見守ります。
やがて行動的になっていき、オムツを外して放尿放便弄便。

弄便した手で、壁、ベッド、スタッフを触るので、これだけはイケメンでも注意しました。
片付けても30秒くらいで忘れますから、イケメン部屋の雰囲気はまるでエクソシストのようです。

 通常なら回復するはずなのに… 

ただ、通常なら2週間もすると、記憶力も回復し、
失禁も無くなってくるのですが、イケメンは治らない。

スタッフの間でも不安の声が聞こえ始めました。
ひと月経ちふた月が経つ頃、少し遅れてイケメンはなんとか、
自分の足で歩けるようになり、箸を使い食事も取れ、トイレも使えるまでになりましたが、
結局、記憶力や思考力は完全に回復せず退院されました。

アルコールにより職を失い、脳の機能に障害を負い、将来的にも認知症のリスクを背負う事となりましたが、現在は幸せに暮らされており、再飲酒もありません。

 

 アルコール依存性は病気です。過ぎたるは及ばざるが如し。
ともいいますので、飲み過ぎにはくれぐれもご注意を。

 

< 了 >

 

※本記事は個人の体験談をもとに作成されております。
※健康法や医療・介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず公的機関による最新の情報をご確認ください。
※記事に使用している画像はイメージです。

 

 

 

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