シニア層でお仕事している人もしていない人も「他の人はどんな仕事しているのかしら~?」「私にも出来ることないかなぁ」なんて・・・ちょっと気になっていませんか?
そこで、お仕事している人やお仕事を探している人に「お仕事の話を聞いてみよう」という企画です。
第2回は 「農園サポーターになってみた」になります。
それではどうぞ。
ペンネーム:ひよりん
プロフィール:62歳で会社を退職。今はフリーランス。コラムを書いたり、HPやカタログの製作をしています。ウォーキングとヨガは朝のルーティンに。黒猫シャロンとシニアライフを楽しんでいます。
農民サポーターになる前は?!
今回は、退職後に「農園サポーター」になった本田さん(仮名)をお訪ねしました。
3年前に退職した本田さんは現在69歳。メーカー勤務で43年間、勤めあげました。
出身は関西ですが、大学卒業後1年間は中南米横断のバックパッカーとして旅に出たため同級生より就職活動が1年遅れてしまいました。
就職先を探すのが相当大変だったようですが、めでたく某メーカーに1年遅れて就職できました。
当時は日本経済の飛躍の時、それに合わせてご自分もさらに企業の中でキャリアを積むことができて存分に活躍できた時代だったそうです。
最終的には子会社の社長まで上りつめて66歳で退社。
退社した後は、どんな生活をされているのか?とても興味深かったので、お訪ねしてみたら、なんと「農園サポーター」というお仕事をされていました。
何だか面白そうですね。
都会に住んでいると、ふとした瞬間に田舎の風景を思い出し、「田舎に住みたい」と思う時があります。
でもそれは現実的に無理なので、せめて「野菜栽培でもできたらいいなぁ」という人が増えているみたいです。
またそういう人のためのサービスも最近では増えているようですよ。
本田さんがどうやってその仕事に出会い、それがどのような仕事なのかを教えていただこうと思います。
どうして農園サポーターに?
「退職された翌日の朝は、どんなお気持ちでした?」と聞いてみると
「それがね、特に感慨深いものはなくて、いつもの日曜日みたいな感覚だったよ」と。
私はもう少し何か特別な感情があったのではないかと期待したのですが、そんなものなのかとすこし期待外れでした。
そんな風に淡々と過ごしていた本田さんでしたが、半年も経ってくると、なんだかやることが次第になくなってきて、同時に遊びの出費も増えてくる。
せめてゴルフ代くらいは稼ぎたいと沸々と働きたい意欲が湧いてきたというのです。
そんな時、娘さんから「お父さん、こんなチラシが入っていたわよ」と見せられたのが「農園サポーター」という仕事の募集でした。
島田さんは思わず
「これこれ、こんなことやってみたかったのだぁ」と、すぐに電話をしてから面接に行ったとのことです。
さすがの、行動力!
というわけで農園サポーターの仕事について本田さんに語ってもらいました。どうぞ!
農園サポーターってどんな仕事?
私がやっている農園サポーターというのは、野菜つくり初心者に収穫までのアドバイスをする事と、畑を管理する仕事ですが、その前にこういった市民が手軽に使える市民農園について説明しますね。
市民農園とは
そもそもこの畑は、民間企業の畑で、行政や地域や農業グループなどのステークホルダーを繋ぎ、農業の課題に取り組むという課題解決型事業の一つだと言う事を知りました。
農家の高齢化、農家自体の減少、後継者不足等から、使われていない農地が増加しているというのです。
この会社は、その使われていない農地を有効活用するために、新しい価値を付加、サービスや農地の維持管理やマッチングなどをやっています。
どんどん増え続けてしまう使われなくなった農地の再活用と言うことなのですよ。
それを何とか解消できないものかという考え方が事業の始まりのようです。
都会に住むと、個人ではなかなか畑を所有することはできませんね。
またほとんどの人が、そんな本格的な農業をやるつもりはないと思っているでしょう。
体験くらいならやってみたい。
でも一人でやるのは難しいけれど・・・
何人かでシェアして使うなら、一人の負担も軽いだろう。
そういう人達に向けて、初めてでもスムーズに体験できるように、必要なものは全てそろえて、誰でもできる仕組みを提供するビジネスがあったのです。
畑の土地はもちろん、農具・肥料などを提供。それにアドバイザーやサポーターまでつけて野菜や果物を栽培する畑を市民農園と言います。
仕事内容について
もちろん種まきから収穫までは参加する人達が責任もって携わるわけですが、その農作業をサポートして、楽しんでもらえるようにあれこれお手伝いするのが私の仕事です。
アドバイザーと言うよりサポーターですね。
私が働く農園は農家からレンタルした畑で、畑や作物を作る経験はないけれど「収穫してみたい」「農業体験したい」という人達が気楽に体験できるところです。
1年に1回、体験したい・畑を利用したいという人を募集します。
ここは家庭菜園の延長のようなところで、主婦や定年退職した人達がシェアされた農地を自分の区画として登録して、そこで農作物を作るのです。
収穫の時期は家族総出で楽しんでいますよ。
いちご えだまめ きゅうり ナス トマト ピーマン 大根等、 八百屋さんで並んでいるような人気野菜はほとんどあります。
その種や苗・肥料まで農園側が用意しています。
畝(うね)を4つ(1つの畝は160×60㎝)借りられるので、4種類の野菜を選んで自分たちで年間20種類以上の野菜を作ることができるのです。
ほとんどの利用者の方が初心者ですが、安心して楽しめるのは、私たちのようなサポーターがいることだと思います。
それがこの施設の一つのウリにもなっているのです。
道具もすべてレンタルで貸出しするので、畑に来る時は手ぶらでOKと言うところも人気のひとつだと思います。
職場の環境は?
お話した通り体験・利用される方は未経験者ですが、私自身も初めての事です。
こんな私がサポーターになれるのだろうか?と不安でしたが、そういう私のような初心者サポーターのために、研修する場が設けられていました。
採用が決まった後に、本社の研修所で基礎的な知識を学びました。
そこで、有機栽培であることの意味、土について・肥料について・種の蒔き方・苗の植え方・害虫について、それに道具の使い方を学びますが、すべて初めての事ばかりです。
もちろん道具の名前から教えていただくわけです。
当然一度には覚えきれません。
あとは現場でベテランのアドバイザーに日々教えてもらいながらやることになるわけです。
私の場合は週に3日ほど3~4時間くらいの就業になります。
その時には、他に2~3人のサポーターが一緒です。
年齢も様々で50代60代が多いように思います。
ちなみに報酬は1時間1100円弱。
今は私が一番年長者ですが、一番新米なので、できるだけ早目に行って、利用者用の休憩室やトイレの掃除もやるようにしています。
気持ちは40数年前の新入社員です。
覚えきれないことも多々あり、つい何回も同じことを聞いてしまうと
「いい加減に覚えてよ」
なんて言われてしまいますが、仕方ありません。
手が空いた時には、利用者がいない土地で畝を作り、土を掘り起こす作業や水まき・肥料やり、道具等の整備など、やることはいくらでもあります。
土を作るとか、畝を立てるとか、図面を見たってわからないことばかりでした。
でもそれがだんだんわかってくると、これがたまらなく面白くなるから不思議なのですよね。
利用者さんは私たちサポーターに様々なことを聞いてきますので、できるだけお答えしたい!期待に添いたい!と準備しているのですが、なかなか思う通りには行かないものです。
たまにはへこむこともあります。
それは十分にお答えできなかったりする時です。
野菜ごとに違うことがいっぱいありますからね。
肥料や水だってたくさんやればいいわけじゃない。
種の蒔き方、苗の植え方、支柱の立て方、害虫対策だってそれぞれ違いますし、経験とか勘でしかわからない微妙なこともあります。
一朝一夕には覚えられませんし、サポーターだからと言っても、いい加減なことも言えません。
まだまだ勉強不足なのだと年中反省しますが、焦らず一つ一つ身体で覚えるしかないと思いつつ「あぁ歳のせいもあるかな」なんて思ってしまうこともあります。
でも、こうしてまだ学べる機会があることが幸せなことだと思います。
それに何より、健康的な仕事です。
土を触るというのは気持ちが安定するのだと気が付きました。
その上、畑は利用者の皆さんの笑顔が絶えない場所なのです。
自分たちで種を蒔き、植えたものが目の前で日々大きくなり、それを収穫する瞬間などは、たとえようもない感動なのです。
まさに畑のレジャーランドともいえるのではないかと。
ただ、少しだけ愚痴るとすれば、真冬の寒さと真夏の暑さはかなり老体には堪えます笑
でもとても自分にとっては居心地の良い仕事に巡り合えたと思っています。
畑仕事をした後、夕方から自宅で飲むビールは最高ですよ!
その他、農園サポート的なお仕事紹介
さて、今回本田さんのお仕事「農園サポーター」をご紹介しましたが、他にも自治体、個人、NPOなど、農地の再活用や農業支援というカタチのモノや、似たような取り組みがされているものもあります。
似たような名前だけど目的や内容が違うというものもあります。
そこで少しまとめてみましたので参考にしてください。
体験農園
体験農園って、よく聞きませんか?
体験農園とは、都会や観光地などで、一般の人が農業体験できる施設のことです。
例えば、米やリンゴやイチゴのような野菜や果物や野菜を収穫したり、加工したり、あるいは田植え体験や草取り・種まき等農作業の体験をプログラムにして提供している施設などを指しています。
また、農家の方々から技術や知識を学ぶワークショップなども最近では人気のようですね。
子供達には食の大切さを伝えることや、地元で採れる野菜を知る良い機会にもなっています。
こういう施設にもシニアのサポーターがたくさん活躍していますね。
市民農園
市民農園は、よく耳にする「シェア畑」もその一つ。
都市部にある公園や空き地を利用して、市民が農作物を栽培できるようにした施設のことを含めて言います。
市民農園は農家が個人的に農地を提供して、一般の人達が野菜や果物などを栽培する活動などができるようにしているのが一般的ですが、さらにそこに地方自治体、農業協同組合、あるいは民間企業などが施設・土壌、水道のようなものを整備して提供する農園なども増えています。
利用に関する手続きや農作物の栽培方法についての相談なども各施設ごとに対応しているようです。
こういう施設は、農作業を経験したいという人ばかりでなく、自然と触れたい、農業や食に関する知識を深める場としても利用されています。
以前はレジャー農園・ふれあい農園などとも呼ばれていたようです。
農業サポーター
行政の農業推進事業として行われている農業推進サポーターは、登録制で農家の農作業をボランティアで手伝うものです。
農園サポーターとは少し違います。
農業サポーターとは、一般の人が農家や農業団体を支援する活動のための仕組みのことを指します。
具体的には、農家から直接農産物を購入する、農家の生産活動を支援する、農家と消費者をつなぐ「食の共同購入」などもその一つです。
農業サポーターになると言う事は、農産物に対しての理解を深め、農業に関心を持つきっかけになるわけですね。
農家にとっては、直接取引や共同購入を通じて、安定した収入を得ることができます。
生産のリスクを抑えることもできるし、消費者と直接つながることができます。それは農業の活性化にもつながるというわけですね。
各自治体の農業推進事業に問い合わせしてみると、その地域の取り組みの様子がわかると思います。
農業サポーターというのも名称が違いますが、色々あるようです。
以上、今回は農園サポーターという仕事から農業サポーターという話にまで広がりましたが、いかがでしたか?
シニアの働く場所は、ちょっと視野を広げてみると、思いがけない場所にもあるようです。
では、今日はこの辺で、ごきげんよう
リポーターは ひよりん でした。
< 了 >
※本記事は個人の体験談をもとに作成されております。
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