ペンネーム:あきこ
プロフィール:ライター兼訪問看護師。看護師歴30年以上。訪問看護は13年の経験があり、がんやその他の疾患での在宅看取り支援の経験も多数。
今回は絵美子さんは58歳のお話。
15年前にお父様を心筋梗塞で突然亡くし、3年前にお母様を介護施設でお看取りしました。
ひとり暮らしでご実家住まい。
お姉さんは結婚し、市外に住んでいます。
投資始めてみようかしら
絵美子さんから、いつもとは違う内容のラインが来ました。
お金の運用について。
「定額貯金が10年経ったみたいで、満期から1年済んだという連絡が来たの。
どうせ忘れているくらいだから、普通に預金するのでなくて、投資はどうかと思って。
パンフレットをもらったのだけれど、よくわからないし、お勧めはある?」
窓口の職員さんからパンフレットで説明を受け、1週間後に相談予約をしたようです。
パンフレットには次の5つの運用が載っていました。
- 貯金
- 国債
- 投資信託
- ファンドラップ
- 変額年金保険
それぞれの最低申込金額や期間の目安、特徴と注意点、手数料(購入/契約時の手数料、保有/運用中の手数料、解約/換金時の手数料)がまとめられていました。
絵美子さんは投資にも関心を見せましたので、窓口の職員さんはNISA(ニーサ)口座のパンフレットもくれました。
NISA(ニーサ)とは、Nippon Individual Savings Accountの略で、個人向けの少額投資非課税制度。
投資で儲けが出た時、利益にかかる税金を払わなくてよい口座です。
初めての投資
絵美子さんは投資の経験はなく、ご両親の遺産も銀行などで預金していました。
予約の日までの宿題ができ、どうしたものか。
周りの友達とお金の話をしたことはありません。
友達でお金の話をしているのは、あきこさんと真奈美さん。フーンと思って聞きながしていたな、と思いつきラインを送信。
絵美子さんの運用資金は300万円で、10年くらいは完全に忘れてもいい余裕資金。ほかのお金はいつでも引き出せる普通預金など。
ちまたで噂のニーサなるものを、私もしてみむとてするなり。という紀貫之のようなことを言っている。
最初はファンドラップというカタカナ横文字に引かれていました。
手数料はかかるけれど「1.5%」とか「0.055%」とか何やら少ない数字に、これにしようかなと、お洋服を選ぶようなノリ。
数日にわたってラインを交わし、窓口の相談予約はキャンセルし、一旦落ち着くことに。
投資の経験をしていくのは社会や経済のニュースに敏感になり、長期的には資産は増える可能性が高いのでお勧めしました。
ニーサ口座で運用するなら、手数料が抑えられ取扱商品が多いネット証券を推薦。
不安になるような金額は動かさない範囲でチャレンジ。
ファンドラップは、手数料と日本のインフレ率を加えた数字よりも、高い運用実績が期待されるなら検討してはと伝えました。
金融ジェロントロジー
「金融ジェロントロジー」という言葉を聞いたことがありますか?
ニッセイ基礎研究所のレポートによると『金融ジェロントロジーとは、「高齢者の経済活動に関連する諸課題の解決」を目指す専門的研究分野※1』とあります。
引用:金融ジェロントロジーとは? |ニッセイ基礎研究所 (nli-research.co.jp)
ニッセイ基礎研究所 生活研究部 上席研究員・ジェロントロジー推進室兼任 前田 展弘氏のレポート
人生は長くなり資産を守り、運用する必要が高まっています。
高齢化で認知機能が低下すると、財布の置き場や暗証番号を思い出せない、ATMの操作ミスを機械のせいにする、などよく耳にする話。
デジタル化が進み、ネットバンクの操作も複雑です。
そんな高齢者のお客様に、金融機関も困っているのが現状。
金融資産が眠ったままになっていることも経済循環の問題になっています。
これらの問題を金融ジェロントロジーの研究で対応することが期待されています。
とは言っても、まだ具体的で決定的な案があるわけではありません。
成年後見人制度の利用や、家族信託制度の利用、金融機関のお客様理解や対応の強化などです。
シニアの資産運用
貯める時期は認知機能が保たれていますが、資産を生活費に取り崩す時期は認知機能が低下の可能性があります。
複雑な内容の金融商品や引き落としの操作が難しいものは、敬遠することが望ましいでしょう。
資産の定期売却サービスのある証券会社を選択すると、自分の資産が自動で切り崩され、なじみの口座に入るので安心かもしれませんね。
デジタル化が単純で簡単な方法に活かされ、安心の高齢社会を願います。
さて、絵美子さんはネット証券の口座開設にマイナンバーカードが必要とわかり、手続きは中断しています。持っていなかったのです。
絵美子さんのデジタル時代は、ゆっくり進んでいます。
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※本記事は個人の体験談をもとに作成されております。
※健康法や医療・介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず公的機関による最新の情報をご確認ください。
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