ペンネーム:あきこ
プロフィール:ライター兼訪問看護師。看護師歴30年以上。訪問看護は13年の経験があり、がんやその他の疾患での在宅看取り支援の経験も多数。
今回は5年前に子宮がんの手術を受けた香さんのお話。
術後数年して、左足のむくみが強くなってきました。
がんの手術の時にリンパ節も取り除いていたのですが、後になってむくみの症状が出たようです。
足のむくみ対策
最初は、クッションに足をあげて休んでいるとよくなりました。
最近は足をあげて寝ていてもすっきりしなくなりました。だるさも続きます。
医療用の足のサポーターを使用してみると、ややきつめですがむくみにくく、だるさも改善。
サポーターは端がくるくると丸くなったり、足首や膝にしわができたりしやすいです。
端が丸くなってきたり、しわができたりすると、皮膚の血流が悪くなるので、香さんはサポーターの伸びが均一になるよう注意深く装着。
つま先以外を裏返しにしてつま先を差し込み、かかとを合わせて、少しずつ裏返しにしていたサポーターを足に沿わせながら表向きにしていきます。
夜は、サポーターを上から裏返しにしながら脱ぎ、足をお風呂で優しく泡洗浄。
お風呂上りに保湿剤を塗り、傷や異常が無いかを確認します。
蜂窩織炎は身近にある病気
ある日、ふくらはぎの外側に虫刺され跡のようなところを発見。
痛みもかゆみもありません。
その後、ふくらはぎが赤く腫れてきました。触ると熱を持っているのが分かります。
病院で「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」と診断されました。
病名は耳になじみがありませんが、よくある皮膚の炎症なのです。
皮膚は、表面から中に向かって大きく3つの層で成り立っています。
表皮、真皮、皮下組織の3つです。
表皮は新しい細胞が生まれては表面に押し上げられ、角質層になり、垢となって落ちていきます。新しい細胞が生まれてから垢になって落ちるまでのサイクルはターンオーバーと呼び、約28日周期と言われていますが、年齢や皮膚の部位によって異なります。
真皮はコラーゲン、ヒアルロン酸や繊維細胞があり、血管や神経、リンパ管が通っており、お肌の弾力性を保ってくれます。
皮下には主に皮下脂肪があり、この下に筋膜と筋肉。
「蜂窩織炎」は真皮の深層から皮下組織・筋膜など皮膚の深い部分で起こる炎症です。
もう少し浅い部分、真皮の層を中心に炎症が起きていると、病名は「丹毒(たんどく)」とこれも不思議な名前の病気になります。
香さんは、丁寧に足のケアをしていたのですが、傷がつきそこから細菌が入ったようです。
手術後のリンパ浮腫があり、リンパ液の流れが悪いことで細菌に感染しやすかったのでしょう。
むくみを抑えるためのサポーターを注意深く着脱し、皮膚の細菌を減らすように清潔に保ち、保湿剤を使用し皮膚のバリアを高めて頑張っていたのに残念です。
幸い、早い発見と5日間の抗菌剤の内服で、大事には至らずスタッフと一緒にほっと安堵。
指先にできる蜂窩織炎を「ひょう疽(ひょうそ)」といいます。これもまた不思議な名前ですね。
足の深爪をしたとき、つま先が赤くなったことはありませんか。
年齢を重ねると皮膚のバリアの低下や老眼の進行などで、深爪や誤って皮膚を傷つけることも。そこからの細菌感染に注意が必要です。
今のうちから深爪の習慣を避けるように気を付けておきましょう。
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※本記事は個人の体験談をもとに作成されております。
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