【日本気象協会】60 代以上の 100 人に聞いた「熱中症意識調査」の結果を発表

熱中症のリスクが年々高くなっています。特に高齢者の熱中症対策については注意すべき点が多く、高齢者自身だけではなく家族や周りの意識を含めて気をつけていかないといけませんね。

一般財団法人 日本気象協会が推進する「熱中症ゼロへ」プロジェクトは、60代以上の方106名を対象に熱中症に関する意識調査を実施。
その情報をきらきらシニアタイムスでもお届けいたします。

熱中症で救急搬送された50%以上が65歳以上

総務省消防庁によると、2022年5月~9月に熱中症で救急搬送された人は71,029人で、このうち65歳以上の高齢者が占める割合は、54.5%(38,725人)となりました。

熱中症ゼロプロジェクト

高齢者の方は温度に対する感覚が弱くなったり、喉の渇きを感じにくくなったりと、熱中症に特に注意が必要です。

「熱中症ゼロへ」プロジェクトでは、こうした状況を踏まえ、巣鴨地蔵通り商店街協力のもと熱中症に関する意識調査を行い、60代以上の方の熱中症対策の実態と課題の調査をしております。

熱中症に関する意識調査 調査概要

【調査方法】 街頭調査
【調査場所】 巣鴨地蔵通り商店街
【サンプル数】106名(60歳以上)
【調査時期】 2023年5月
※調査結果は、端数処理のため合計しても必ずしも100%とはならない場合があります。

60代以上のおよそ9割が『10年前よりも熱中症に気をつけるようになっている』

10年前よりも熱中症に気をつけるようになっているか聞いたところ、「とても気をつけるようになった」もしくはまあまあ気をつけるようになったと答えた人の割合は全体で89.6%、年代別では60代が最も高く94.4%、70代以上も85%以上となりました。また、いずれの年代も「以前よりも全く気を付けなくなった」の回答は0%でした。

熱中症対策は80代・90代は『寝るとき』も意識。

どのようなときに熱中症に気をつけているか?聞いたところ、全ての年代で「天気予報で「真夏日」「猛暑日」と知らせているとき」が1位、「晴天の中外出するとき」が2位となりました。

年代別にみると60代は「スポーツなど運動をするとき」「アウトドアやレジャーに出かけるとき」「野外イベントやスポーツを観戦するとき」も上位となりました。

また、80代・90代は「寝るとき」と回答した人の割合が57.7%と高く、年代別では3位となりました。

全体で「屋外で作業するとき」は49.1%で3位を占めましたが、反対に屋内で作業するとき」と回答した人の割合は全体で16.0%に留まり、屋外と屋内で熱中症に対する意識の差が見られました。

 熱中症を防ぐためにやっていることは『水分補給』がいずれの世代も8割以上

熱中症の予防や対策として実践していることを聞いたところ、全ての年代で「こまめに水分を補給する」が8割以上で1位となりました。

年代別にみると、60代と70代は「エアコンを利用する」が7割前後で2位に入っていますが、80代・90代では「エアコンを利用する」(53.8%)よりも「窓を開けて室内の風通しをよくする」(73.1%)と回答した人の割合が高く予防・対策のためのアクションの違いが見受けられました。また、睡眠や食事に関する項目も上位となりました。

本格的に暑くなる前から暑さに慣れるための発汗運動等を行う」と回答した方は全体で18.9%となり、体を暑さに慣れさせる「暑熱順化」の大切さは、まだあまり知られていないことが分かりました。

熱中症の予防・対策の気がかりは『エアコンによる体の冷え』や『電気代』が上位

熱中症の予防や対策として気がかりなことを聞いたところ、全ての年代で「エアコンを使用すると体が冷えること」が5割前後で1位となりました。

そのほか「エアコンや扇風機を使うことで電気代がかかること」や「水分をとりすぎるとトイレが近くなること」も共通して上位となったほか、外出時に水分や日傘、帽子などを持ち歩くと荷物が多くなることや、忘れ物につながりそうという心配の声もありました。

また「室内にいるときは窓を開ければ十分だと思うこと」が70代で20.5%、80代・90代で26.9%でした。

1位の気がかりとあわせると、エアコンの使用に対して積極的ではない層が一定割合いることが推察できます。

まとめ

日本気象協会は『熱中症は気象災害のひとつである』と考え、10年前の2013年から「熱中症ゼロへ」プロジェクトの活動を始めました。

 

今回の調査では60代以上のおよそ9割の人が、10年前よりも熱中症に気をつけるようになったと回答しており、熱中症予防・対策意識が高まっていることが分かりました。

昔と現在の7・8月の猛暑日日数の比較[参考資料2]にある通り、1971年から1980年、また2013年から2022年の各10年間で、最高気温が35℃以上となる「猛暑日」の積算日数を比べると、仙台、東京では昔の10年に比べて6~7倍の日数となりました。さらに名古屋、大阪、福岡では、いずれも現在の日数が100日を超えており、過去と比較して厳しい暑さとなる日が増加していることが分かります。

 

現在60代以上の方が、約40年前に感じていた「夏」よりも、現在の「夏」は厳しい暑熱環境になっているといえます。

今回の調査では、屋外に比べ屋内で作業するときの方が熱中症への意識が向きにくい傾向がみえたことや、エアコンを利用するよりも窓を開けて自然風のみで過ごす人・窓を開ければ十分と考える人も一定数おり、室内にいても条件次第では熱中症にかかることについて理解促進が求められる結果ともなりました。

エアコンによる体の冷えや電気代、水分補給なども気がかりの上位を占める中、日常生活の延長上で無理せず対策をとってもらえるようにすることが今後の課題の一つとも見られます。

あわせて本格的に暑くなる前から暑さに慣れるための発汗運動等を行う」と回答した人の割合も少なく、体が暑さに慣れること(暑熱順化)の重要性と方法についても呼びかけが必要です。

 

「熱中症ゼロへ」プロジェクトでは、室内で過ごす際の熱中症対策のポイントや、体を暑さに慣れさせる「暑熱順化」 についての情報を公開しています。

室内でのシーン別の注意点、また暑熱順化の詳しい内容や、印刷して暑熱順化の知識を深めることができる「暑熱順化ポイントマニュアル」も公開しています。

熱中症は正しい知識を知り対策を行うことで、かかることを防げます。

「熱中症ゼロへ」プロジェクトは高齢者の方への熱中症の予防啓発活動を強化し、正しい予防・対策情報を引き続き呼びかけます。

 

熱中症対策のポイント

熱中症ゼロへ 熱ゼロ研究レポート

 

■「熱中症ゼロへ」プロジェクトとは
熱中症にかかる方を減らし、亡くなってしまう方をゼロにすることを目指して、一般財団法人 日本気象協会が推進するプロジェクトです。プロジェクト発足以来、熱中症の発生に大きな影響を与える気象情報の発信を核に、熱中症に関する正しい知識と対策をより多くの方に知ってもらう活動を展開してきました。2013年の活動開始から10年となる今シーズンは「必要な人に、適切なタイミングで、わかりやすく」をテーマに、激甚化する気象環境や変化する社会のニーズをとらえた熱中症の予防啓発活動を実践していきます。

 

■一般財団法人 日本気象協会について
日本気象協会は、民間気象コンサルティング企業の先駆けとして1950年に誕生しました。防災・減災や洋上風力発電の分野以外でも、気象データを活用した商品需要予測や電力需要予測、気候変動対策などのコンサルティングを通じ、気象データのビジネスでの利活用を提案しつづけています。所属する気象予報士の数は350人を超え、日本最大級の規模を誇る気象の専門家集団として企業のESG投資やSDGs活動への支援も積極的に展開中です。

<了>

 

 

 

 

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