【終活のすすめ】リビングウィル(事前指示書)とは?

シニア世代になると、終活のひとつとして葬儀やお墓について考えたことがある方もいらっしゃるでしょう。

では、介護や医療が必要になった場合についてはどうでしょうか

最期のときをどこで過ごしたいか、どんなふうに過ごしたいか、受けたい介護や医療、逆に受けたくない医療についての希望について考えておくことは非常に重要です。

そして、その希望を家族や周りの方と共有しておくことも大切です。

この記事では、「もしも」に備えて、元気なうちから将来的な介護や医療についての希望を考え、それを「リビングウィル(事前指示書)」として残しておく必要性と課題について解説していきます。

リビングウィル(事前指示書)とは

リビングウィルとは、健常な人や患者が、将来的に判断能力を失った場合に備えて、自分に行われる医療行為や介護についての希望を生前に意思表示しておくことをさします

また事前指示書とはリビングウィルに加え、意思表示ができなくなった場合に、治療やケアの内容について自分の代わりに判断してくれる『代理人』を指定しておくことも含文書にしたものです。

厳密にはリビングウィルと事前指示書は異なりますが、一般的には代理人も含めた内容をリビングウィルと表現することも多いため、本記事では『リビングウィル(事前指示書)』と表現します。

厚生労働省が2018年に公表した「人生の最終段階における医療に関する意識調査」によると、意思表示の書面を作成しておくことについて、一般国民の66.0%が賛成しているという結果があります。

一方、賛成であると回答した人のなかで、実際に書面を作成している人は一般国民の8.1%にとどまる結果になっています。

このように、必要性を感じていても実際の作成には至っていない場合が多いのが現状です。

なぜリビングウィル(事前指示書)が必要なのか?

私たちは普段、自分の価値観や意志にそって物事を決断しています。

しかし人生の終焉に際し、意識がなく自分の意志が伝えられなかったり、認知症などで判断ができなかったりすることがあります。

その場合は、本人に代わって家族や医療従事者が、終末期医療に関する方針を決定しなければならないことがあるのです。

事前に本人の意思が確認できていないことで、治療方針について家族間で意見がわかれたり、決断に対して家族が「本当にこれで良かったのか?これが本人が望んだ形なのか?」と思い悩んだりすることもあります。

そして何より、事前の意思表示があることで、本人が望む最期をその人らしく迎えることに役立てることができます。

日本の医療現場の現状として、例えそれが回復の見込みが難しい場合の延命治療だとしても、一度開始された治療を途中で中止することは、不可能ではありませんが、倫理的な観点から実際は非常に難しい状況です。

そのため回復の見込みが難しい終末期に、もし本人が延命治療を望んでいなければ、「開始しない」という選択肢しかありません。

そのためには、本人の意思を事前に表示しておく必要があります。

また本人が望まない過剰な延命を行わないことで、医療費の削減につながるという考え方もあります。

リビングウィル(事前指示書)の内容

全国的に統一された書式があるわけではないため、病院や施設、自治体が独自に作成した書式を使用することができます

統一された書式はありませんが、記載内容には共通点があるので、それぞれ解説していきます。

①代理人を決めておくこと

自分自身で医療・ケアに関する判断・決定ができなくなったとき、代わりに本人の意志を代弁してくれる代理人を決めておきます。

そうすることで、スムーズな家族間での話し合いや、治療方針を決める際の手助けになることができます。

②指示したい内容について記載すること

 

指示したい内容については、主に下記の項目が挙げられます。

指示したい内容

希望する、希望しない医療措置について
心肺蘇生、人工呼吸器の装着、点滴、輸血、抗生剤の投与、酸素投与、経管栄養など

終末期を過ごしたい場所について
自宅で過ごしたい、病院や施設で過ごしたい、その他に過ごしたい場所など

告知について

病名は聞きたい、余命について知りたい、治療費について知りたいなど

自分らしく過ごすためのケアで望むこと

何よりも痛みや苦痛を取り除いてほしい、誰かにそばにいてほしい、できる限り自分で排泄をしたいなど

自分が大切にしたいこと

できる限り口から食べたい、弱った姿を人に見せたくないなど

回復の見込みがないときの延命治療の希望について

出来るだけの延命治療をしてほしい、回復が見込めない場合の延命医療はしてほしくないなど

単に希望する医療措置の内容だけでなく、最期に過ごしたい場所や、最期まで大切にしたいことなど、本人の価値観に基づく希望が最大限に尊重されるような内容も含まれます

項目に過不足があれば自由に追記することも可能です。

リビングウィル(事前指示書)を書く際の注意点

リビングウィル(事前指示書)に法的な効力はなく、何度でも書き直すことが可能です。

気持ちや価値観は常に変化するもので、本人の環境や病状によっても変わるため、定期的に見直すことをおすすめします。

病状の変化にともなう書き直しであれば、そのたびに医療チームと話をすることも大切です。

書き直した際には、更新した日付も忘れず記載しましょう。

リビングウィル(事前指示書)を作成するうえで大切なこと

書面に書き込むことが目的ではなく、作成する過程でご家族とも十分に話し合うことが大切です。

厚生労働省も、もしものときのために自分が望む医療やケアについて前もって考え、家族や医療ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取り組みを「人生会議」として啓発しています

例えば、最期のときを自宅で過ごしたいという希望があったとして、それを実現するためには家族の協力が必要な場合もあります。

逆に、本人が周りに迷惑をかけまいと我慢していることでも、家族や医療チームの協力で実現可能なこともあります

また本人は終末期の延命治療はしないと希望していても、家族も同じようにそれを受け入れているとは限りません

そのことがきっかけで、本人が望む最期を迎えられないケースもあります

 

ひとつの事例をご紹介します。

Aさんの場合

闘病の末、最期の残された時間を家族とともに自宅で過ごしたいという希望があり、在宅医療が介入することで病院から住み慣れた自宅へ退院してきたAさん。

Aさんは最期は何も医療措置をせず穏やかに迎えたいと希望していても、家族は少しでも長く生きてほしいと思っていたら……。

ある日、呼吸がとまっていることに気づいた家族は、慌てて救急車を呼ぶかもしれません。

すると到着した救急隊には蘇生の義務があるため、蘇生処置をしないわけにはいかないのです。

この事例のように、可能な限り本人の意思が尊重されるためには、周囲との話し合いは非常に重要です。

 

リビングウィル(事前指示書)の課題 

今後、ますます高齢化がすすみリビングウィル(事前指示書)の必要性が高まる一方で、課題もあります

それは、書面を記入した時点から長いこと更新されず、状況が変化したなかでも時間的隔たりを考慮せずに書面の内容を実施してよいかどうかという点です。

また書面を作成する際に、本人が本当に医療措置の内容や、ケアについて理解できているかということも課題として挙げられます。

先述した事例のように、本人と家族の希望にずれが生じていた場合に、本人の希望が通らないこともおこりえます。

リビングウィル(事前指示書)のまとめ

 

リビングウィル(事前指示書)について、その必要性と課題も含め解説してきました。

大切なことは、まずは自分自身の「もしも」に備えて、どうしたいかを考えること、そして周りと常に共有できる関係性を築いておくことが大切ではないかと思います。

 

今回の寄稿者さま

ペンネーム:いまいあやこ
プロフィール:看護師ライター兼、終活カウンセラー。病院・地域医療を経て、添乗ナースとして国内外を飛び回り、2018年には世界一周も経験。
2022年より、いのちを見つめることを通して、人生を自分らしく彩る楽しさを語り合える\我が人生、悔いなし!/の会を定期開催中。
「30-40代からの終活のススメ」「いっぺん死んでみる®︎ワークショップ」など講座も開催中。

< 了 >

 

 

※本記事は個人の体験談をもとに作成されております。
※健康法や医療・介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず公的機関による最新の情報をご確認ください。
※記事に使用している画像はイメージです。

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