ペンネーム:菜緒
プロフィール:51歳主婦。夫と娘の3人暮らし。実家の母の介護を手伝っています。
認知症の人の数は毎年増加傾向で、厚生労働省によると2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると予測されています。
私の母も認知症です。母(当時73)は2年前から週に3回デイサービスに通っています。
明るく元気で、若いころから人気者。
家にいるより外で過ごすのが大好き。
友達に誘われては駅前の喫茶店でコーヒーを飲みながらおしゃべりするのが楽しみな毎日を送っていました。
母と犬が行方不明?!
デイサービスをお休みしたある日、母は自宅で一人で留守番をしていました。
お昼ご飯を食べ終わり暇になってしまった母は、無性に外出したくなり、誰にも告げずに愛犬と散歩へ行ってしまったのです。
近くに住む親戚が、母におやつを届けようと自宅に来たのが午後3時ごろ。
自宅に母と愛犬の姿がないのを見て、すぐにいつもの散歩コースを探しに行きましたが、母は見つかりません。
母の携帯電話は着信音はするものの、母が電話に出ることはなく、私の携帯電話には発信履歴だけが増えていきます。
このころの母は、携帯電話に着信があっても出られなくなっていたのです。
母がいなくなって5時間ほど経過し、これはいよいよ警察に相談に行こうかと家族で話していたとき、いつもお世話になっているデイサービスから電話がかかってきました。
3キロメートルの冒険
なんと母は愛犬を連れて、自分が通っているデイサービスを訪れていました。
自宅からデイサービスまでは3キロほど離れており、毎回車で送迎されていたので道順はわからないはずです。
一体どうやってたどり着いたのか知りようもありませんが、恐らくあちこち迷いながらたまたま着いたのでしょう。
国道近くで交通量が多い上に、踏切のそばにあるデイサービスまで交通事故に合わずに無事に到着できたことは幸運でした。
大急ぎで母と愛犬をデイサービスに迎えに行くと、母は楽しそうに愛犬をお披露目の真っ最中です。
本来はペット禁止のデイサービスですが、高齢で犬を飼うのを諦めた方たちが多くいらして、温かく接していただき本当に助かりました。
周りの声に耳を傾けよう
後で母に聞いたところ、「愛犬ちゃんをお友達に見せたくて、いつもの駅前の喫茶店に行こうとしたらデイサービスに着いた」とのことでした。
駅前の喫茶店までは徒歩4分。
母は10年通っている常連さんです。
このときまで母が自宅周辺の道もわからなくなっていたとは、家族全員気づきませんでした。
私と妹は後日ケアマネさんからお叱りを受け、母は受け入れ日数が多いデイサービスに移ることになりました。
いつもそばで見ているからこそ認知症の進行に気づけないことがあります。
第三者の意見は素直に取り入れるべきだと思った出来事でした。
< 了 >
※本記事は個人の体験談をもとに作成されております。
※健康法や医療・介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず公的機関による最新の情報をご確認ください。
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