ペンネーム:ホーリー
プロフィール:介護職員歴約20年。有料老人ホームの介護職員を経て、現在は管理職に従事。
今回は介護施設入居者の外出についてのお話です。
老人ホームの単独外出は難しい
結論から先にお伝えすると、施設は数多く有れど施設に入居した場合「単独外出禁止の可能性が高い」と言えます。
というのも昨今、施設利用者の何らかの事件・事故があった場合、施設側にも非があるとみなされる傾向が高まっています。
例えば認知機能に全く問題なくても、転倒した場合、やはり施設側はなんらかの責任を負いやすい環境にあります。
当たり前ですが、たとえ認知機能に問題がない場合であっても、事故が起こる可能性はゼロではありません。
そのため施設側としても、単独外出を原則禁止とし、施設職員と事前に決めた時間に同行する方法が一般的になりつつあります。
よくよく考えると不思議な話?
しかし、よくよく考えると不思議な話です。
若者でも、転ぶことはあります。道に迷うこともあります。
逆に、大人になって「一度も転ばなかった人」、「一度も道に迷わなかった人」はいないのではないでしょうか?
海外では、「年齢」ではなく「認知機能の低下」や「日常生活動作(ADL)の低下」をケアマネジャーや医師等の専門職が見極めるべきだと考えるのが一般的です。
海外からすると差別?
認知機能も身体機能も問題ない場合は、単独外出しても問題ないと考えます。
逆に禁止という考えに対し「外出できる能力を保持しているのに、閉じ込めるのは虐待なのでは?」と考える国もあります。
施設の人、全員を「単独外出禁止」にする傾向のある日本は、海外からすると「年齢差別」とみなされる傾向にあります。
老人ホームはリスクとどう向き合うのか
ここ10年、日本では施設利用者が抜け出して様々な事故や事件に遭遇することが相次いでメディアに取りざたされるようになりました。
10年前であれば中には、「外出できる能力を持った利用者は自由に単独で外出可能」としていた施設も、日本中で起きる転倒や行方不明の事件・事故を皮切りに、方針を「単独外出禁止」に切り替え始めました。
各市区町村も当然、高齢者の事件・事故に慎重な姿勢を取らざるを得ない格好となりました。
市区町村と、介護施設とは日頃から密接に関係しています。
介護施設には義務がある。
例えば、施設利用者が転倒で外傷を負い、病院で処置などしてもらった場合「事故報告書」を、市区町村に届ける義務があります。
勿論、市区町村によっては届けなくてもよいとするところもあります。
今回、「事故報告」の細かい提出要件は、議題から逸れるため触れませんが、転倒し病院受診した場合、市区町村もその情報を共有しているということ。
そのため、転倒事故が多いと市区町村から「この施設は、単独外出で転倒者を出す無責任な施設なのでは?」という評価を受けやすい点にあります。
こうなると、施設はますます「単独外出禁止」をするようになります。
勿論、全ての市区町村がそのような考え方ではありません。
また全ての施設が「単独外出」を禁止しているわけでもありません。
しかし、近年の流れを鑑みるに、今後も「単独外出禁止」の流れがより加速することは間違いありません。
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※本記事は個人の体験談をもとに作成されております。
※健康法や医療・介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず公的機関による最新の情報をご確認ください。
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