現役看護師でイラストレーター「ソファちゃん」の『ある日の介護日誌』の第四話です!
ケアマネジャー朝倉さん協力のもと、おばあちゃんの介護準備を行う。そしておばあちゃんが退院し、新しい日常が始まる。
前回のお話はこちら
登場人物紹介
- 登場人物
- おばあちゃん
69歳。アル中。アジフライを世界一美味しく作る。 - ソファちゃん
12歳。小学生。ご飯は3杯食べる。 - おかこ
母。シングルマザー。仕事を2つ掛け持ちしている。 - ニコちゃん
兄。ポヤポヤしている。ゲーム無いと無理。 - おじい
祖父。酒屋の店主。免許返納して店番中心。 - まあちゃん
従業員。 - アッちゃん
叔父。従業員。糖尿病による膵炎で入院し激痩せ。 - レンくん
叔父。消防士。 - フミくん
叔父。 - 朝倉さん
ケアマネジャー。
アッちゃん
春
ソファちゃんが小学校の卒業式を終えたころ、おばあちゃんは退院した。
「卒業式のワンピースは、知り合いからのお下がりで、とってもかわいいグレーのワンピース。胸には生花をピンで刺して、ずいぶん練習した旅立ちの日にを歌ったの。私、すごく上手に歌えたのよ!それでね」
「ソファちゃん。そんなに矢継ぎ早に話さないの。」
おばあちゃんが帰ってきて良かった!
おかこの諌める言葉も、ソファちゃんの耳をただ通り過ぎた。
おばあちゃんは喋られないし、考えていることもわからないけど、元気なおばあちゃんだ。
「母さん、そろそろデイサービス行く時間だから。」
「アッちゃん、お店いいの?」
アッちゃんとは、おばあちゃんの長男である。
小さい時から、アッちゃんはソファちゃんやニコちゃんを色んなところに遊びに連れて行ってくれた。
お箸の持ち方も、食事の時のお行儀も、アッちゃんが教えてくれた。
「父さんが店開けてるから。俺が母さんを下に連れていくよ。」
アッちゃんはおかこのひとつ年下で、新婚さんだ。
以前はこの家に住んでいたが、結婚を機に家を出て、今はこの家兼店舗に通っている。
この家は1階が店舗、2階〜4階が自宅となっている。
おばあちゃんがデイサービスに通所するときは、アッちゃんが2階から1階までおぶって移動する。
玄関までの移動は、(デイサービスの)送迎サービスの範囲外だ。
おばあちゃんは小柄で、体重は40kgもない。
とはいえ、毎日朝夕、おばあちゃんをおぶって階段を上り下りするのは大変だ。
しかし不思議と、アッちゃんは笑顔だった。
アッちゃんは、ヘルニアで腰を痛めているはずなのだが。
デイサービスでは入浴も、食事もケアしてもらえる。
提供日誌を見ると、楽しんでいるようで何よりだ。
おばあちゃんが退院してから半年が過ぎた。
ソファちゃんはピカピカの中学生。
吹奏楽クラブに入り、音楽漬けの日々を送っていた。
学校が終わったらすぐ、学習塾に走った。
勉強が遅れるのが嫌で、おかこに頭を下げて塾に通わせてほしいと頼み込んだ。
おかこは、仕事をひとつ増やして学習塾代を捻出してくれた。
昼はハンバーガーショップの店員、夜は病院で当直の医療事務だ。
子どものためなら何でもしてしまうおかこである。
ある日、ケアマネジャー朝倉さんから電話があった。
「そろそろ、疲れてくる頃です。月に一度、ショートステイを利用してみませんか。」
ショートステイとは、介護施設に1週間程度短期入所することだと朝倉さんは言う。
毎日デイサービスを利用するといっても、朝と夜はオムツ交換や食事介助、送迎準備、
デイのない日は一日中介護が必要になるため、1週間でもそれが無くなるのはありがたい。
「朝倉さんが紹介してくださる施設なら...」
おかこはおばあちゃんを、月に1度、ショートステイに預けることにした。
ソファちゃんは、学校、部活、学習塾と自分の世界の中でいっぱいいっぱいだった。
まさかこの後に起こることなど、誰も予測できなかった...。
<続く>
※この物語は、ソファちゃんの経験をもとにしたフィクションです。
ペンネーム:ソファちゃん
職業は中堅の病棟看護師です。
普段は子育てをしながら、看護師をしつつ、SNSに絵をアップしたり、ご依頼を受けて漫画を連載させていただいております。
Instagram:instagram.com/_sofachang/
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※本記事は個人の体験談をもとに作成されております。
※健康法や医療・介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず公的機関による最新の情報をご確認ください。
※記事に使用している画像はイメージです。