現役看護師でイラストレーター「ソファちゃん」の新連載『ある日の介護日誌』がスタート!
登場人物紹介
- 登場人物
- おばあちゃん
69歳。アル中。アジフライを世界一美味しく作る。 - ソファちゃん
12歳。小学生。ご飯は3杯食べる。 - おかこ
母。シングルマザー。仕事を2つ掛け持ちしている。 - ニコちゃん
兄。ポヤポヤしている。ゲーム無いと無理。 - おじい
祖父。酒屋の店主。免許返納して店番中心。 - まあちゃん
従業員。 - アッちゃん
叔父。従業員。糖尿病による膵炎で入院し激痩せ。 - レンくん
叔父。消防士。 - フミくん
叔父。
その時は、ある日突然に
- おばあちゃんが倒れたのも、亡くなったのも、同じ夏のことだった。
これはソファちゃんが12歳の頃のお話。
当時、自営業である酒屋の店舗兼自宅に祖父母、母、兄と暮らしていた。
おばあちゃんは当時60代。
店のレジの前に座り、配達の電話をとったり、お店の接客をしたりしつつ、合間を見て家族や従業員全員の食事を作る。
この生活を、嫁いでから40年近く続けてきた。
おばあちゃんは家族全員に食事を作り終えたら、自分はバターを塗った食パンを1枚食べる。
「おばあちゃん、それだけでいいの?」
「良いからあんたはさっさと食べなさい。」
(おばあちゃんてば食が細いのね。私ならすぐお腹が空いちゃうな。)
ソファちゃんは、それくらいにしか思っていなかった。
太陽が燃えるように照りつける、ある夏の日のこと。
蝉の音が心地よく感じるほど、エアコンの効いた涼しい部屋で、ビデオテープに録りためたバラエティ番組を観る。
(お中元のゼリーも3つ食べてしまおう♩)
ソファちゃんは、まさしく夏休みを満喫していた。
「ドンっ!」
突然、聞きなれない衝撃音が居間に響いた。振り返ると、そこにはおばあちゃんが一升瓶を抱えて床に倒れている。
顔を真っ赤にして、「うんうん」唸っている。
理解が追いつかず、喉がぎゅっとしまるようだった。
「おばあちゃん大丈夫?」
そんな簡単な声かけもできない。この時、ソファちゃんはまだ小学生。
パニックである。
だってその日は、おばあちゃんと2人きり。みんな仕事や用事で家を空けている。
「火事ですか?救急ですか?」
電話口の声が何だか怖く聞こえる。
知らない人と電話で話すなんて怖い。
「おばあちゃんが倒れて、それで...」
「火事ですか?救急ですか?どっちですか?」
と大人は繰り返す。
「おばあちゃんが倒れて、起きられない」と伝えたいだけなのに、何度も同じことを聞かれる。
もしかして話が通じてない?
私が変なこと言ってる?
電話口の大人が変なの?
おばあちゃん大丈夫かな?
どうしよう。
またパニックである。
ただ「救急をお願いします」と答えれば良いのだが、それすらできない。
その後、搬送され、おばあちゃんはその日のうちに帰宅した。
アルコール多飲による酩酊状態、転倒による打撲だけで済んだらしい。
この日から、おばあちゃんの様子がおかしくなった。
そして1週間も経たないうちに、おばあちゃんはまた倒れた。
左脳出血だった。
その日以降、おばあちゃんは喋られなくなった。
<続く>
※この物語は、ソファちゃんの経験をもとにしたフィクションです。
ペンネーム:ソファちゃん
職業は中堅の病棟看護師です。
普段は子育てをしながら、看護師をしつつ、SNSに絵をアップしたり、ご依頼を受けて漫画を連載させていただいております。
Instagram:instagram.com/_sofachang/
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※本記事は個人の体験談をもとに作成されております。
※健康法や医療・介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず公的機関による最新の情報をご確認ください。
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