ペンネーム:あきこ
プロフィール:ライター兼訪問看護師。看護師歴30年以上。訪問看護は13年の経験があり、がんやその他の疾患での在宅看取り支援の経験も多数。
今回は達夫さんは48歳、営業マンのお話です。
最近、疲労感や息切れ、めまいが多くなり、疲れているのかとコーヒーを飲みながら働いていました。
心臓の病気?脈に変化が
職場の健診で脈が遅いことを指摘されました。
「スポーツ心臓だろう」と、スポーツマンでもないのに勝手に解釈。
放っておいたのですが、健診センターから精密検査を催促する手紙が来たので、渋々受診。
念のため、24時間の心電図検査が組まれました。
胸に500円玉くらいのシールを5枚貼り、そこからコードが出ています。
コードは、手のひらサイズの機械に集約され、機械はベルトで腰に固定。
記録用紙をもらいました。
運動や家事動作、排便など脈が速くなる動きをした時間、就寝時間と起床時間を書いたり、症状があったりした時に記録します。
翌日外来で取り外し、解析に提出。
1週間後に解析結果を聞きに外来に行きました。
医師から告げられたのは、洞不全症候群(どうふぜんしょうこうぐん)という念仏のような言葉でした。
洞不全症候群とは
心臓は脳の指令を受けて動くのではなく、独自の電気刺激で動いています。
最初に「動け!」と指令を出すのが洞結節(どうけっせつ)です。
心臓を、一つの封建的な会社に見立ててみましょう。
社長は1分間に70回とか、運動をしたときには120回など、「動け」と心臓の職員に電気刺激の指示を出します。
指示を受けて社長直轄の心房セクションの職員が指示を伝達。
次に、部長の房室結節(ぼうしつけっせつ)が、直轄職員からの指示をまとめなおしてから
課長のヒス束(ひすそく)に電気刺激で指示します。
課長は右と左の係長に伝達。
係長から受けた指示を左右のそれぞれの社員が心臓の筋肉それぞれに伝えて働きます。
達夫さんの心臓会社の社長は、指示を出せていない状態でした。
心臓は1分間に60回から80回程度拍動しています。
24時間の心電図の解析で、少ないときの達夫さんの拍動は1分間に40回。
心臓会社の中で、部長は社長からの指示が来なければ自ら指示を出しますが、社長よりも少ない回数しか出しません。
少ない回数の拍動では心臓から十分な血液量を身体全体に回せず、達夫さんは疲労感や息切れ、めまいの症状を感じていたわけです。
洞不全症候群の治療
検査を進めた結果、心臓ペースメーカーを入れることになりました。
ペースメーカーは、心臓を刺激するリード線を留置し、本体につなげて鎖骨下あたりの胸に埋め込みます。
大きさは機能にもよりますが、直径が4~5㎝のソラマメ型で厚さは5㎜位をイメージしてみてください。
達夫さんのペースメーカーの機能は、社長が指示を出さないときに社長を刺激します。
これで部長が動くと、ペースメーカーは休憩。
一定の時間部長の指示が確認できなければ、部長にも刺激をだすという設定です。
部長の様子を見る時間は0.2秒位です。
部長がペースメーカーの刺激なしに動いてくれると、より生理的な指示伝達ができますし、ペースメーカーの電池を節約することも可能に。
達夫さんの心臓会社では部長の働きに異常はなさそうでしたが、万が一に備えてあります。
電池は5年から10年くらい持つと言われ、電池を取り換えるために定期的に手術も必要。
半年に1度など定期的に検査を受けて、ペースメーカーの作動状況や電池の残量を調べます。
達夫さんは無事手術を終え、職場に復帰しました。
術後について
達夫さんは「ペースメーカー手帳」を携えています。
万が一の意識消失やいつもとは違う病院にかかった時など、ペースメーカーの情報がスムーズに伝達できる手帳です。
手帳を開くと、手術をした病院や先生の名前など以外は、表の中に数字やローマ字の羅列。
達夫さんの心臓会社への指示内容や検査結果などの大切な情報です。
今では、術後の痛みも少なくなり、左腕も回せるようになりました。
IH調理器や電気自動車の充電スタンドとは距離を置くよう言われています。
達夫さんはこれまで無関心だった自分の身体をいたわるようになり、毎日血圧や脈を測定。
自分の手首に反対の指を3本あてて、脈拍測定もお手のもの。
疲労感やめまいの症状もなくなり、元気に営業に回っています。
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※本記事は個人の体験談をもとに作成されております。
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