現役看護師でイラストレーター「ソファちゃん」の『ある日の介護日誌』の第二話です!
ソファちゃんが12歳の頃、おばあちゃんがアルコール多飲による酩酊状態で転倒し救急搬送される。
その時は打撲のみだったので当日退院だった。しかしその1週間後、おばあちゃんはまた倒れて、救急搬送されてしまう。
診断結果は”左脳出血”。
そしておばあちゃんは、その時から喋ることができなくなってしまう…。
前回のお話はこちら
登場人物紹介
- 登場人物
- おばあちゃん
69歳。アル中。アジフライを世界一美味しく作る。 - ソファちゃん
12歳。小学生。ご飯は3杯食べる。 - おかこ
母。シングルマザー。仕事を2つ掛け持ちしている。 - ニコちゃん
兄。ポヤポヤしている。ゲーム無いと無理。 - おじい
祖父。酒屋の店主。免許返納して店番中心。 - まあちゃん
従業員。 - アッちゃん
叔父。従業員。糖尿病による膵炎で入院し激痩せ。 - レンくん
叔父。消防士。 - フミくん
叔父。 - 朝倉さん
ケアマネジャー。
”おかこ”というキーパーソン
「...ただいま。」
その夜、おかこが病院から帰ってきた。
1人だった。
「おばあちゃんは?一緒に帰ってこなかったの?」
「おばあちゃんは入院になっちゃった。脳出血って。」
「そうなんだ...」
ソファちゃんは、悲しさというより、安心した。
入院するということは、元気になるまで治療して、元気になって帰ってくるということだ。
次に会う時は、元気いっぱいのおばあちゃんだ。ついでに病院でお酒も飲めなくなって、アル中も治っちゃうだろう。
元気なおばあちゃんに、また会える日を楽しみに待つとしよう。
おかこは30歳の時に離婚した。
これからは自分1人で、幼い子ども2人を食べさせていかなければ。
慰謝料も養育費もない。でも、前に進むしかない。
それからは、母子寮で暮らしながらシートベルト工場や事務職などを転々とし、なんとか1人で2人の子供を育てていた。
「おかこ、ご飯食べないの?ソファちゃんのご飯ちょっと食べる?」
食卓につく時、いつもソファちゃんとニコちゃんの分だけが用意されていた。おかこはコーヒー一杯である。
「おかこはお腹あんまり空かないから、コーヒーだけで良いの」
ソファちゃんは、(何でお腹空かないんだろう。おかこって病気なのかな?ソファちゃんはこれ全部食べてもお腹空くけどな)などと考えていた。
我が子に食べさせるため、おかこが自分の食事を抜いていたことなど思いもよらなかった。
おかこは両親とうまくいかない時期があり、実家から逃げるように結婚し家を出た。
そのため、今更助けてほしいとは言えなかった。
ある日、弟のアッちゃんが結婚して実家を出ることになった。
実家で子ども2人と暮らさないか、と、おじいちゃんは言う。
その頃実家では、おばあちゃんが家族と従業員の食事を3食毎日作り、掃除洗濯、店番もしていた。
おかこが実家に戻ることで、少しでもおばあちゃんの家事負担が減るならば、
子どもたちも鍵っ子から、"帰宅したら大人が必ずいる家"に住むことができるならば...。
おかこはこうして、子どもたちと両親と暮らすことにした。
40歳の春だった。
昼間は子どもと過ごせるよう、当直の医療事務を始めた。
1人で必死に働いて、子育てをしていた日々が少しは楽になるはず...
しかし実際は勤務先の病院で月14回もの当直、その合間を縫って家事育児をすることになった。
長男のニコちゃんは、学校でうまくいかないこともあり、おかこは昼は学校、家事、夜は仕事という生活が続いた。
おばあちゃんが脳出血で入院してから2週間。
退院に向けてやらなきゃいけないことがある。
おかこは医療事務である。
まず”要介護認定”をせねば...と、すぐ退院に向けて思考を切り替えていた。
現状、おばあちゃんは失語症、片麻痺がある。
どこに退院するにしろ、介護サービスを受ける必要があるのだ。
介護サービスを受けるためには、幾つものプロセスがある。
まずは要介護認定、ここからだ。
役所で手続きをし、ケアマネジャーを紹介された。
このケアマネジャーは、おかこにとって忘れられない存在となった。
<続く>
※この物語は、ソファちゃんの経験をもとにしたフィクションです。
ペンネーム:ソファちゃん
職業は中堅の病棟看護師です。
普段は子育てをしながら、看護師をしつつ、SNSに絵をアップしたり、ご依頼を受けて漫画を連載させていただいております。
Instagram:instagram.com/_sofachang/
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※本記事は個人の体験談をもとに作成されております。
※健康法や医療・介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず公的機関による最新の情報をご確認ください。
※記事に使用している画像はイメージです。