なんとなく「定年までに貯金しないといけない」と思っていませんか?
その背後には、「老後2000万円問題」が潜んでいます。
定年までに2000万円を貯蓄する必要があるというニュースを耳にしたことがあるかもしれません。
しかし、本当に老後の生活資金として2000万円が必要なのでしょうか?
そして、「老後2000万円問題」とは何なのでしょうか。
また、2000万円を貯めるためには、毎月どのくらいの金額を貯蓄すべきなのでしょうか。
本コンテンツは「老後2000万円問題」の本質と解決策について考察するシリーズ第一弾となります。
ペンネーム:谷口久美子
プロフィール:大学事務職員や外資系ITコンサルティング秘書職を経験し、現在は2児の母親をしながらフリーライターとして活動中。
3級ファイナンシャル・プランニング技能士。節約やポイ活をしながら出費を抑えて家計をやりくりするアラフォー。
20代の頃に1000万円貯金を達成したことがいい経験。株主優待好きの優待族でもあり、高配当株も保有する中長期狙いの個人投資家でもある。
老後2000万円問題とは?
「老後2,000万円問題」と聞くと、老後までに2,000万円を絶対に貯めておかなくてはいけないと思いがちですが、あくまでも2,000万円はモデルケースです。
「老後2,000万円問題」は、金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書でまとめられたもので、夫65歳以上で妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯が、毎月約5.5万円の不足金額がある場合、20~30年間の不足額が約1,320~1,980万円になってしまうことから「老後(定年退職)までに2,000万円を貯めておきたい」と提案する内容です。
結論から伝えると、本当に2,000万円必要かは疑問です。
東京と地方だと必要な老後資金が違う?
老後までに2,000万円必要かどうかは、東京在住か地方在住かによっても違うことでしょう。
東京では、一般的に物価が高いので、自然と食費が高くなりがちです。
総務省が調べた家計調査(※1)、2022年度の都市階級・地方・都道府県庁所在市別を調べると、1ヶ月の消費支出は関東地方と比較して地方だと割安です。
関東地方は25万7,991円だったことに対して、東北地方22万9,313円、四国地方21万7,869円、沖縄地方に至っては18万8,900円と消費支出額が抑えられています。
また、毎月の住居費も地方と比べて高いです。家賃地代を調べると、関東地方は1万6,616円に対して、東北地方は8,632円、四国地方は7,611円でした。
老後に収入がなくなった時に年金だけでは賄えない世帯が多い場合、定年退職して地方にUターン・Iターンする選択肢はどうでしょうか。
自然と物価が安くなり、住居費も安くなることでしょう。場所によっては移住支援金がもらえる場合、住居費が格安で済む話はよく聞きます。
Uターン転職をして補助金をもらえることもあり、そうなれば、転職をして田舎暮らしも選択肢として検討出来ます。
ただし、地方だと車社会のところが多く、自動車の購入や維持費が別途必要となります。
健康や加齢の都合で運転が困難になる、または免許返納となると、生活に大きな支障が出るのでそこは要注意です。
また海外移住も選択肢とはしてはありです。きちんと調査し、場所を選べば居住費や食費が安くなる場合もあります。
語学に自信のある方は日本を離れて第二の人生を海外で暮らすというのもいいかもしれません。
ただし文化や治安など、日本と大きく異なる場合がほとんどなので家族とよく相談して決めましょう。
老後2000万円問題と退職金
この「老後2000万円問題」では、有名企業に勤める会社員はまとまった退職金があるため、貯金をしていなくても不足分を補うこともできそうです。
会社員・公務員などは2つの年金制度(国民年金と厚生年金保険)に加入しています。会社によっては加えて、独自の企業年金に加入している場合もあります。
退職する時にはこれらの退職金がもらえます。
問題は自営業の方で、国民年金のみに加入するため年金額が少なく、現役世代のうちから計画的な貯金が必要です。
なお、大企業に勤めている場合は、退職金だけで2000万円もらえる場合もあります。
学歴別・退職金の平均相場
中央労働委員会による調査では、男性が定年まで勤めた時の退職金平均額が算出されています。
大学卒、短大・高専卒、高卒いずれも、平均して2000万円以上の退職金がもらえます。
そう考えると、大企業に勤務している人からすると、これだけでも安心ではないでしょうか。
もちろん企業によって違いますし、転職経験があると退職金の額は違います。
そのため退職金だけではなく、自分自身の貯金でも積立しておけると安心です。
もし退職金で2,000万円くらいもらえるなら、「老後2,000万円問題」はそこまで不安にはならないかもしれませんね。
定年後の生活費はいくらかかるの?
「老後2,000万円問題」では、2,000万円の額が目立ってしまいましたが、そもそも、毎月発生する生活費はいくらかかるんでしょうか。
その答えは、各家庭によって違います。
そもそも、「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯で毎月約5.5万円の不足がある場合」で、年金だけでは足りない金額があるなら2,000万円を取り崩ししなくてはいけないわけです。世帯によっては、一人暮らし、子どもがいる、扶養親族がいるなど状況が違います。
日々質素に生活していて、もらえる年金額でやりくりできる場合、株の配当金など不労所得がある場合、もらえる年金額がそもそも多くて不足がない場合などは、「老後2,000万円問題」は悩まなくても大丈夫な話です。
考えたいことは、以下のようになります。
- 年金はどれくらいもらえるのか
- 生活費はいくらかかっているのか
- 不足分の有無
「年金はどれくらいもらえるのか」は、「ねんきん定期便」が役立ちます。
毎年誕生月に、年金記録を記載したハガキが届いています。
年間、いくらくらいの年金がもらえるのかが書かれているので参考にしてみましょう。
「不足分はあるかないか」で、やりくりできそうであればそこまで心配しなくてもよさそうです。
不足分があるようなら、今のうちから貯金しておく必要があります。
定年後も働く場合
定年の年齢は、60歳以上にしなければならないと法律で決められています。
企業によっては、65歳を定年の年齢とする場合もあり、将来的には70歳定年企業が出てくるのではとも言われています。
一度は退職した社員を、再雇用制度で仕事をしてもらう企業もあり、収入を得ながら働ける年齢は決まったものではなくなってきています。
自営業では定年の年齢はなく、いわば、「生涯現役」でも働けるようになってきています。
定年退職した後も働き続けるなら、安定した収入が確保できるため、不足金額を考えなくてもかまいません。
老後2,000万円をどうやって貯めるのか?
「老後2,000万円問題」が話題になると、つい「2,000万円は貯めておきたい」と感じる人も多い気がします。
この2,000万円貯める場合、貯金額や定年退職までの年数によって金額は変わってきます。
この場合、60歳で定年を迎えるとして、概算で毎月どのくらい貯めるべきかを考えてみます。
金融庁のシミュレーションは、何年でいくら貯めなくてはいけないのかがわかります。
参考にしてみましょう。
貯金0円、50歳の場合
2,000万円を10年間で貯める必要があります。
- 2,000万円を10年で貯めるとするなら、毎月16万6,667円が必要だとわかります。
貯金300万円、50歳の場合
1,700万円を10年間で貯める必要があります。
- 1,700万円を10年で貯めるとするなら、毎月14万1,667円を貯めていく必要があります。
貯金500万円、50歳の場合
1,500万円を10年間で貯める必要があります。
- 1,500万円を10年間で貯めるとするなら、毎月12万5,000円を貯めていく必要があります。
貯金1,000万円、50歳の場合
1,000万円を10年間で貯める必要があります。
- 1,000万円を10年間で貯めるとするなら、毎月8万3,333円を貯めていく必要があります。
どうでしょうか。月々、貯金する金額が見えてきました。
退職金は含まずに考えているものの、これまでまったく貯金がなかった人は、毎月10万円以上の貯金はどうしても焦ります。
そのため、投資信託などリスク商品も考えたいものです。
投資信託などリスク商品も組み合わせた場合
リスクがあるものの分配金を再投資していける投資信託などを組み合わせていくと、毎月の積立金額は少なくなります。
5%の年利にして試算してみます。
1,000万円を10年間、5%の年利の金融商品で貯める場合をシミュレーションしてみました。
※手数料などは除く
月々6万4,399円を貯めていけばよくなります。
黄色に見えている部分は、投資信託の分配金で、分配金を再投資していくことで、資産が着実に増えていくとわかります。
このように、目標金額に向けて、毎月いくら貯めて、何の金融商品を選ぶのかを考えてみると、具体的に動けるのではないでしょうか。
そしてこの6万円を貯めるのが最初は難しいと思っている人も、ポイ活、スマホ代などの固定費の見直し、ラテマネーの節約などをすることで、ムダだったお金が節約でき、お金が貯まりやすくなります。
老後2000万円問題 まとめ
「老後2,000万円問題」に限らず、将来の年金だけでは生活費が赤字になりそうだと不安があるなら、働いているうちに貯めて、不安を払拭。
もし、老後も余裕がある生活を送りたいなら、現役世代のうちに少しでも多く貯められるといいですよね。
そして、次回、月々のお金を貯めるためのテクニックを紹介。
なにげなく使っているお金の使いみちですが、すべてが無駄遣いかもしれません。
2,000万円の貯金額はすべての世帯にあてはまる金額ではないものの、目安として2,000万円、もしくはそれ以上を貯めておけると安心できていいですね。
豊かな老後生活のため、第一歩を踏み出してみましょう。
< 了 >
※本記事は個人の体験談をもとに作成されております。
※健康法や医療・介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず公的機関による最新の情報をご確認ください。
※記事に使用している画像はイメージです。