ペンネーム:ホーリー
プロフィール:介護職員歴約20年。有料老人ホームの介護職員を経て、現在は管理職に従事。
こちらもよくある質問ですが、糖質制限中だけど好きなものを食べていいかについてのお話です。
糖質制限と人生最後の食事
貴方は、もし次の食事が最後だとしたら、何を召し上がりたいですか?
その食事が、周囲から「危険だから」という理由で食べられなかったらどう思いますか?
以前、糖質制限のある終末期の方に「ステーキとご飯をお腹いっぱい食べたい」とご要望をいただいたことがあります。
言わずもがな、日本人にとって米は主食です。
と同時に、ご飯は糖質の代名詞でもあります。
その方は、ご飯の量も制限されていました。
またご飯だけでなく、他の食事も糖質制限食を召し上がる毎日を過ごしていました。
自分の身体のことを考えると糖質制限食を食べ続けることは、仕方ないと頭ではわかりつつも、次第に食べること自体が辛いだけのものとなっていました。
「死んでも良いから、ステーキとご飯をお腹いっぱい食べたい」
そんなある日、「死んでも良いから、ステーキとご飯をお腹いっぱい食べたい」と強く訴えられました。
その方は、糖質制限があるだけでなく、嚥下機能も劣っており、普段からミキサー食を提供している方でもありました。
しかし、本人の強い要望もあり、当時、介護職員だった私は各セクションや家族と話し合いを重ねました。
最終的には私が見守りのもと、ごはんとステーキを召し上がっていただくことができました。
実際、見守りをした私は、「ゴホン!」と本人が言うたびに、生きた心地はしませんでしたが、本人は半量ほど召し上がり、満足して食事を終えることが出来ました。
その後も、何度か通常食を召し上がり、満足して食事を終えることが出来ています。
しかし、そこまでして本人の要望を叶えようとする施設は少ないのが現状です。
糖質制限と施設のリスク
本人、家族からもリスクに関する説明と同意書を事前に一筆いただきましたが、それでも基本、リスクがあることは施設は行おうとはしません。
実際には、危険だからという理由で、止められ、召し上がれずに代替えの食事や、食べられたとしても満足いく量ではなく少量を提供されてしまいがちです。
もし、将来あなたがどうしても食べたいものがあるけれど、周囲から止められるようなリスキーな状態な場合は、本人だけでなく家族が一致団結して、なにがおきても施設側に非がないことを一筆書くくらいの覚悟は必要になります。
高齢だって食事を楽しみたい
高齢になると、食事が唯一無二の楽しみという方も多くいます。
あなたにとっても、私にとっても将来「食べたいけど、何らかのリスクが有り、食べられない」という未来は充分にあり得ます。
その時になって、施設によっては「施設側では、そのようなリスクを追ってまで、食事を召し上がる方針はとっていない」と言われたら後の祭り。
しかし、実際、希望の食事を召し上がることが出来ずに、過ごす方が多くいます。
施設検討の際、意外と忘れがちですが、食事が「自由か管理か」を確認することはとても大切な視点になります。
事前に、なんらかの疾患により、食事に関する制限がでてしまった場合、その状態に合わせた食事が提供されることを確認するだけでなく、そのような状態に陥った時それでも「自分の好きなものを食べても良いか」は、事前に確認しておきましょう。
事前に確認しておくことで、ゆくゆくのストレスが減るだけでなく、満足度の高い施設生活を送ることにも繋がります。
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※本記事は個人の体験談をもとに作成されております。
※健康法や医療・介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず公的機関による最新の情報をご確認ください。
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